キミン・キム(マリインスキー・バレエ プリンシパル)

アジア初のプリンシバルが魅せる妙技

C)Lee Jae Cheon
 クラシック・バレエの最高峰、歴史と伝統を誇るマリインスキー・バレエが11月から12月にかけて東京、兵庫(11/30,12/1)で来日公演を行う。公演初日『ドン・キホーテ』(11/28)と『白鳥の湖』(12/8 12時公演)に主演し、古典から現代作品まで網羅したバレエ団総出演のガラ公演『マリインスキーのすべて』にも出演するのは、東洋人初のプリンシパル、キミン・キム。アメリカン・バレエ・シアター、パリ・オペラ座バレエ団等にもゲスト出演し、長身から繰り出されるどこまでも高く伸びやかな跳躍、アカデミックで美しいクラシック・バレエの技術により世界中で熱狂を呼んでいる。
 マリインスキー・バレエの来日公演で『ドン・キホーテ』が上演されるのは実に22年ぶり。また、マリインスキー劇場は、今世界中で踊られているプティパ/イワーノフ版の『白鳥の湖』が1895年に初演された劇場であり、誇りを持って大切に踊り継がれてきた作品である。
「『ドン・キホーテ』のバジルは愉快なキャラクターだけれど、カリスマ性もあります。子どもの頃から大好きな演目で、ミンクスの音楽が人の心を揺さぶるものを持っているので、踊りもそれに合わせて最初から最後まで盛り上がることができます。『白鳥の湖』は、何よりチャイコフスキーの音楽が素晴らしい。特に1幕2場の白鳥が登場するシーンは、最高の音楽だと思っています」
 19歳でマリインスキー・バレエに研修生として入団した時にはロシア語も話せなかったが、瞬く間にプリンシパルに昇進した。
「苦労はありませんでした。自分でも胸を張って『頑張りました』と言えるほど努力をしましたが、少しも苦痛には感じませんでした。入りたいと思ってマリインスキー・バレエに入団して願いが叶ったわけですし、バレエが本当に好きなので、つらいと感じたことはありません」
 今回の来日公演でキムは、トッププリマ、ヴィクトリア・テリョーシキナ、そして伸び盛りの若手、ナデージダ・バトーエワと踊る。
「マリインスキー・バレエのバレリーナたちは、親切で優しい人ばかりです。テリョーシキナさんは、僕と『ドン・キホーテ』を日本で踊るのは初めてなので、二人とも楽しみにしています。彼女はリハーサルでも本番でもパートナーを尊重してくれます。バトーエワさんは、今シーズン初めて『白鳥』を踊りました。彼女はとても一生懸命で熱心な人で、舞台の上では大きなエネルギーを発揮しているので、今から共演する姿が目に浮かびます」
 5月に上演されたウィーン国立バレエ団『海賊』では、キムの驚異的なテクニックによって、場内が興奮のるつぼとなった。マリインスキー・バレエの来日公演でも、語り継がれるような名演が観られるだろう。
「ウィーン国立バレエ団の来日公演では満足のいくパフォーマンスができて幸せでした。マリインスキー・バレエの来日公演までの5ヵ月の間に、さらに成長できるように頑張り、その姿を日本のお客さんへ贈りたいです」
取材・文:森 菜穂美
(ぶらあぼ2018年7月号より)

マリインスキー・バレエ
『ドン・キホーテ』 2018.11/28(水)、11/29(木)、12/5(水)
『マリインスキーのすべて』 2018.12/2(日)、12/3(月) 
『白鳥の湖』 2018.12/6(木)〜12/9(日)
東京文化会館
※配役、全国公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp/mariinsky2018/