鈴木優人(調布国際音楽祭エグゼクティブ・プロデューサー)

国際色豊かで個性溢れる魅力的な音楽祭

C)Marco Borggreve
 「バッハの演奏」「アートとの連携」「次世代への継承」をテーマに2013年にスタートし、今回で6年目を迎える調布国際音楽祭。調布市内のホールなどの文化施設にとどまらず、子ども向けのイベントや、街中で気軽に無料で聴くことができる公演も多数。昨年より音楽祭に「国際」の名前を冠し、出演アーティストもますます国際色豊かになってきた。

BCJによるモーツァルト・オペラの2本立て

 今年の大きな話題は音楽祭のフィナーレを飾るバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の公演を鈴木優人が初めて振ることだろう。演目はモーツァルトの短いオペラ2本立てだ。
「私は常々、モーツァルトのオペラを手掛けたいと思っており、今回《バスティアンとバスティエンヌ》と《劇場支配人》を取り上げることにしました。演奏会形式ではありますが、演出家の佐藤美晴さんが、セットがなくても十分に楽しむことができる舞台にしてくれます。《バスティアン〜》はモーツァルト12歳の作品ですが、序曲のテーマがベートーヴェンの『エロイカ』の主題と似ていたり、ドキっとするような転調や和声が使われたりと、大人顔負けの傑作です。名ソプラノのジョアン・ランさんが出演するのも楽しみですね。あのサリエリと競作したことで知られ、“楽屋落ち”をネタにした音楽付き喜劇《劇場支配人》も面白いですよ。日本を代表するハイ・ソプラノの森谷真理さんと中江早希さんに出演していただき、プリマ・ドンナを超絶技巧で“競って”もらいます(笑)」
 鈴木には「モーツァルトのオペラをあるべき姿でやりたい」という思いがあるという。
「彼の時代の楽器や演奏法だけでなく、彼のウィットというか、お客さんを乗せるようなパフォーマンスを、なるべくそのままの姿で届けたいと思っています。モーツァルトはお客さんを楽しませることをすごく考えていた人で、そのフィーリングは自分と合う感じがするのです」

鈴木雅明&フェスティバル・オーケストラによる「プルチネッラ」と「運命」

 音楽祭のもう一つの目玉企画は調布国際音楽祭フェスティバル・オーケストラ。オーディションで選ばれた若手演奏家と日本を代表する名手たちとで構成される。今年は、鈴木雅明が、バッハからベートーヴェン、ストラヴィンスキーに至る多彩なプログラムを一人で指揮する。
「『プルチネッラ』は、ストラヴィンスキーが彼なりにバロック音楽を解釈して、自分のことばで“しゃべり直した”作品。バッハは管弦楽組曲第3番を取り上げます。メインに「若い演奏家たちと『運命』はどうですか」と父(鈴木雅明)にきいたところ、二つ返事で「いいね!」と引き受けてくれました。実は、父が『運命』を指揮するのは今回が初めてなのです。リハーサルもそのほとんどを公開にしますので、リハーサルの方が本番よりも面白いかもしれません(笑)」

世界的ソリストも登場

 海外からは、ソプラノのジョアン・ラン、ヴァイオリンのレイチェル・ポッジャーが招かれる。
「ジョアンさんは、BCJのツアーで何度も一緒に演奏したことがあります。今回は、モーツァルト、シューベルト、ブラームスを私の弾くフォルテピアノとともに歌ってもらいます。彼女の声は透明で美しく、そしてとても豊かなのです。また、彼女の日本でのリサイタルはこれが初めてですので、ぜひご注目ください。この音楽祭では素晴らしい古楽器奏者をどんどん紹介していきたいと思っています。今年は満を持してポッジャーさんに来ていただきます。特にバッハ(ポッジャー編曲)の無伴奏フルートのためのパルティータが楽しみです」
 そのほか、ピアノの森下唯、アンサンブル・ジェネシスとの「ヴェルサイユの光と影」、作家の平野啓一郎をゲストに迎えての福田進一と大萩康司のギターデュオ・リサイタルもある。恒例の深大寺本堂での演奏会には寺神戸亮トリオが出演。また、オープニング・セレモニーでは、「わが町調布合唱団」や地元高校の吹奏楽などが参加して、ベートーヴェンの「第九」終楽章(吹奏楽版)を演奏する。今年も魅力的な公演が盛り沢山の1週間になりそうだ。
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ2018年6月号より)

調布国際音楽祭2018
2018.6/24(日)〜7/1(日) 調布市グリーンホール、調布市文化会館たづくり、深大寺 ほか
問:調布市グリーンホール チケットサービス042-481-7222
  調布市文化会館たづくり インフォメーション042-441-6177
http://chofumusicfestival.com/cmf2018/