【会見レポート】東京ストラディヴァリウス フェスティバル 2018

 2018年7月から10月にかけて開催される「東京ストラディヴァリウス フェスティバル 2018 -‘f’enomenon-」の記者会見が、4月11日に都内で行われた。フェスティバル実行委員会の実行委員長/代表キュレーターを務める中澤創太(株式会社日本ヴァイオリン代表取締役社長)、東京藝術大学学長でヴァイオリニストの澤和樹、伊・クレモナ市ヴァイオリン博物館(Museo del Violino)館長のパオロ・ボディーニ、駐日イタリア大使のジョルジョ・スタラーチェの4名が登壇した。
(2018.4/11 外国特派員協会 Photo:I.Sugimura/Tokyo MDE)

左より:澤和樹、中澤創太、パオロ・ボディーニ、ジョルジョ・スタラーチェ

 同フェスティバルは、世界最高峰の弦楽器として知られる「ストラディヴァリウス」を主役に据えた体験型のクラシック フェスティバル。クレモナ市ヴァイオリン博物館、東京藝術大学、英国王立音楽院などの協力を得て公演と展覧会が開催され、アントニオ・ストラディヴァリ(1644-1737)が手がけた21挺の弦楽器が東京に集結する。

左2枚:螺鈿細工の装飾が施されたストラディヴァリウス ロード Rode(1722年製)
英国アシュモレアン博物館所蔵/Photographs©Jan Röhrmann
右2枚:5,6挺しか現存せず、演奏可能な唯一のギター、ストラディヴァリウス サビオナーリ Sabionari(1679年製)
クレモナ市ヴァイオリン博物館所蔵/Photographs©Jan Röhrmann

 中澤は「誰もが名前を知るストラディヴァリウスにフォーカスを当てたフェスティバルで、クラシック界が盛り上がればと考えました。ヴァイオリンは約300年前にストラディヴァリが完成させてから、ほぼ形が変わっていない。数百年前の楽器の音色が今も世界中に届いている、その素晴らしさを伝えたい」と意気込みを語った。ボディーニ館長は、「クレモナの楽器製作はユネスコの無形文化遺産に登録されています。今回のフェスティバルには、アンドレア・アマティ作の現存する世界最古のヴァイオリン(1570年以前)などをイタリアから持ってきます。クレモナには、ヴァイオリン製作が始まるより数百年前から木工の伝統があり、それが音楽の伝統と結びついて引き継がれ、1550年ころから現代に至るまで楽器製作の中心地となったのではないかと思います」と述べた。現在、人口約72,000人に対して、160もの楽器工房があるという。

1718年製のストラディヴァリウスを演奏する澤和樹

 オープニングを飾る7月の「ストラディヴァリウス ソロイスツ コンサート」では、三浦文彰(ヴァイオリン)と宮田大(チェロ)がソロを務め、東京藝術大学と英国王立音楽院 日英名門音楽大学ジョイントオーケストラとともに、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」、ヴィヴァルディの4つのヴァイオリンのための協奏曲 ロ短調などが披露される。ソリストの二人に加え、オーケストラに参加する学生も含め、計6挺のストラディヴァリウスが奏でられる。8月に開催される徳永二男のリサイタルでは、徳永が一人で2挺のヴァイオリンを弾き分け、サラサーテ、サン=サーンス、ヴィエニャフスキのプログラムを披露。楽器ごとの音色の違いを楽しむことができる。さらに、10月には、マキシム・ヴェンゲーロフ(ヴァイオリン)のリサイタルが行われ、こちらも2挺のヴァイオリンによりブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番・第2番などが演奏される。
 澤は「東京藝術大学と英国王立音楽院は1998年に交流協定を締結し、今年でちょうど20周年になります。10月の展覧会では、藝大所有の1717年のストラディヴァリウス『アーク』も初めて展示される予定です。今回、ストラディヴァリウスのもつ多様性という点がクローズアップされていることは、ヴァイオリニストしてもとても興味があります」と述べた。

左より:澤和樹、中澤創太、パオロ・ボディーニ

 コンサートに加え、今回のフェスティバルの中核をなすのが、10月9日〜15日に六本木ヒルズ 森アーツセンターギャラリーで開催される「ストラディヴァリウス 300年目のキセキ展」。世界各地から集められた21挺のストラディヴァリウスの弦楽器が一堂に会すアジアで初の機会となる。ヴァイオリンやヴィオラ、チェロのほか、世界に5,6挺しか現存しないという5弦ギターも展示される。製作者の初期、挑戦期、黄金期、晩年とすべての時期の代表作を揃え、その全貌を見ることができるという。
 期間中は、会場内にライブステージが設置され、生演奏などのライブプログラムやトークセッションが行われる。また、イタリアから来日するヴァイオリン製作家による楽器製作の様子を見学することができるほか、歴史・テクノロジーといった視点からもストラディヴァリウスの特徴を深く掘り下げ、21世紀の今も、生きた楽器として存在するストラディヴァリウスの価値を体感することができる展覧会となっている。

東京ストラディヴァリウス フェスティバル 2018 -‘f’enomenon-
http://tsf2018.com/