タンブッコ(パーカッション・アンサンブル)

地球の“パルス”を伝える


 あらゆる“モノ”が叩き尽くされ、多様な音の世界を創造していく。衝撃的なパフォーマンスで聴衆を圧倒、グラミー賞ノミネートも4度というメキシコの世界的パーカッション・アンサンブル「タンブッコ」が、新アルバム『大地のにおい』を発表。「私たち打楽器奏者は、色々な意味で先駆者。誰も通ったことのない道を歩んでいます」——アーティスティック・ディレクターのリカルド・ガヤルドは語る。
「常に探検し、音楽の可能性を聴衆と分かち合う。そのために、私たちを取り巻く現実世界と想像上の世界という、2つの世界を表現しようと試みます。その過程で音楽の新たな表現方法、または他ジャンルの音楽・芸術と共通する“言語”を発見する。これは音楽が何世紀にもわたって可能にしてきたことです」
 1993年、メキシコ大学で学んだ奏者4人で結成。グループ名は、メキシコの作曲家カルロス・チャベズが64年に書いた、打楽器のための作品から採った。
「タンブッコが歩む道は、前衛的である場合が多く、そこで新たな音を見つけます。しかし時には過去へ遡り、素晴らしいソノリティ(響きの様態)を発見し、その作品の再解釈へ挑むのです」
 新アルバムのタイトル曲は、植木鉢やボトル、パイプなどあらゆるモノを叩き、「地球が誕生した過程を“圧縮”した」という。
「楽器の性質の根幹に“パルス”(鼓動)がある打楽器は、生命の原始的なカタチを具現化したものともいえます。パルスは宇宙の至る所にあり、私たち自身にも存在します。この曲は音楽はもちろんのこと、楽器自体も様々なパルスと繋がっています」
 さらに、「西洋音楽的な弦楽の表現を、どう打楽器に置き換えるかに腐心しました。その結果、どんな楽器で演奏しても偉大な音楽の価値は不変だと証明できたはずです」と自信を見せるラヴェルの四重奏曲の第2楽章、「打楽器の発展にとって重要」と評するライヒ、邦楽器を交えた松尾祐孝の作品など、全5曲を収録。目まぐるしく移り変わるパルスは刺激的で、一瞬たりとも“耳”が離せない。そして、特に感じるのは、強烈な色彩感だ。
「このアルバムは“架空のアートギャラリーへの招待状”と解釈できるかもしれません。この“ギャラリー”では作品ごとに違った色彩だけではなく、質感や技巧、絵の具の量(音量)、そして具体性と抽象性との対比をも感じることができるはずです」
 「楽器」という枠組すら、超越してしまったようなタンブッコ。
「貴重なストラディヴァリウスも、楽器以前に単なる“モノ”。素晴らしい音で奏でられて、貴重な“モノ”となる。つまり、モノと偉大な楽器の違いとは、楽器(モノ)の良さを引き出す作曲家と、それを表現できる奏者がいるかどうか。優れた打楽器奏者は、すべてのモノに秘められた物語や音を引き出せなければなりません」
 「京都岡崎音楽祭 2018 OKAZAKI LOOPS」での公演も要チェックだ。
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年5月号より)

タンブッコ・パーカッション・アンサンブル
コンサート
2018.6/23(土)、6/24(日)各日13:00
ロームシアター京都 ノースホール
問 ロームシアター京都075-746-3201
http://www.mbs.jp/okazaki-loops/
5/12(土)発売

CD
『大地のにおい』
マイスター・ミュージック
MM-4032
¥3000+税
4/25(水)発売