水谷川優子(チェロ)

素晴らしい仲間とのチェロづくしのステージ

C)Sakiko Nomura
 曲目といい編成といい、この人のコンサートはいつも刺激的で、聴き手の好奇心を掻き立ててくれる。チェリストの水谷川優子が、「年に1度、自分の好きなことにチャレンジできる、お祭りのような場所」と語るリサイタル・シリーズ。昨年節目の10回目を終え、次の10年への新しい一歩を踏み出す。「Cello×Cello〜チェロ、変幻自在!」と題して、8人のチェリストたちによる、さまざまな編成の、チェロだけのアンサンブルで構成する公演だ。
「先輩から、頼もしい若手まで入っていただいて、思いっきりチェロづくしで」
 厚い信頼を寄せる先輩・渡邊辰紀をスペシャルゲストに、「頼もしい弟のような存在」という海野幹雄、そして中西哲人、藤原秀章、水野優也、吉田啓晃、菅井瑛斗と、中堅から若手、留学を控えた大学生まで、各世代のチェリストが集結する。
「私を含めて8人、ひとりとしてキャラがかぶらない。たぶんチェリストは、100人いても全員引き出しが違う。それがチェロの魅力です」
 コンサートでは、その8つの個性を、タイトルどおり「変幻自在」の編成で楽しめる、独創的でわくわくするプログラムが組まれている。まず、水谷川と渡邊のデュオによるパガニーニ「ロッシーニの主題による変奏曲(モーゼ幻想曲)」。もとはヴァイオリンとピアノ(管弦楽)のための作品だが、「お相手が(渡邊)辰紀さんなので、もっと遊べると思って」という、水谷川自身による編曲だ。そしてシューマンのチェロ協奏曲を、なんと独奏+チェロ4本で(萩森英明編曲)。
「原曲の第2楽章で、ソロがオーケストラのチェロ・パートのトップと絡む、あのイメージ。あのものすごくインティメートな世界に、最初から入っていったらどうなるか。チェロ・アンサンブルは何でもできるという自負があります」
 そして後半は、チェロ四重奏によるバッハ「シャコンヌ」を挟んで、現役チェリストでもあるジョヴァンニ・ソッリマの作品を2曲。独奏の「嘆き」では、奏者の歌が要求されている。
「ずっと男性の声のイメージがあったんですけど、意外に自然にできそうな気がして」
 そして最後は六重奏を従えて、渡邊とのデュオの「チェロよ、歌え!」が嵐のように駆け抜ける。
 「気がついたらチェロを持っていた。チェロのない人生が想像できない」と水谷川。チェロを愛し、チェロに愛された、天性のチェリストによる、とっておきのチェロづくし。彼女の、そしてこの楽器の魅力の虜になる人が増えそうだ。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2018年5月号より)

水谷川優子 チェロリサイタルシリーズVol.Ⅺ
Cello×Cello〜チェロ、変幻自在!
2018.6/3(日)14:00 東京文化会館(小)
問:コンサートイマジン03-3235-3777 
http://yuko-miyagawa.com/