正戸里佳(ヴァイオリン)

パリの香りをライヴとCDでお届けします

 桐朋学園女子高等学校音楽科を首席卒業後、同大学ソリスト・ディプロマ特待生を経てフランスで研鑽を積んできた正戸里佳。17歳でパガニーニ国際ヴァイオリンコンクールにて第3位、27歳のときにはドミニク・ぺカット国際ヴァイオリンコンクールで審査員満場一致の第1位および聴衆賞受賞など、国際的に非常に高い評価を受けている彼女は、これまでフランスでの活動に重きを置いてきたが、昨年より日本での活動を積極的に増やしている。
「もちろんヨーロッパでの活動も継続していきますが、これまで培ってきた音楽を日本のお客様にお聴かせしたいと思い、昨年から日本での演奏活動も増やしています」
 5月17日にはソロリサイタルを開催予定。またその前日にはCDが発売される。どちらのプログラムもドビュッシーにラヴェル、プーランクのソナタを中心としたもので、まさに彼女のこれまでの経験が凝縮された内容だ。
「ずっとフランスの作曲家のソナタをまとめて録音したかったのです。特に今回選んだ3人の作品は非常にフランス的でありながら、まったく違う個性があります。ぜひそれを聴いていただきたいです」
 なお、このCDについてフランスの巨匠ヴァイオリニストであるパトリス・フォンタナローザが次のような賛辞を贈っていることも注目だ。「素晴らしいヴァイオリニストというだけではなく、優れた音楽家である彼女は、このフランス音楽の傑作集の録音の中で、これらの作品の精神を的確かつ深く直観し、彼女の感性を通して私達に聴かせてくれています」。さらに今回のリサイタルとCDにはプーランクの「平和のためにお祈りください」やドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」など、歌曲やピアノ曲の編曲作品も取り入れた。
「それぞれの作曲家の多面性も出せたらと思い選曲しました。特にプーランクの歌曲は私が広島出身ということもあり、音楽を通して平和について考えてもらえるようなきっかけを作れたら…といった思い入れがあります」
 今回のCDとリサイタルでの共演者は菅野潤。フランスを拠点に活躍するピアニストであり、今回のプログラムを演奏するには最高のパートナーである。
「菅野さんとは、パリで、とある音楽家のホームパーティーの席で自然に知り合い、当初はお話をさせていただくだけだったのですが、こうして今回共演の機会をいただけてとても嬉しいです。音色の一つひとつにフランスの色を感じますし、とても音楽的なアイディアをくださり、一緒に表現を追求できるので、アンサンブルの可能性がどんどん広がります」
 多彩なレパートリーと意欲的なプログラムで魅せる若き才能に期待が高まる。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2018年5月号より)

正戸里佳ヴァイオリン・リサイタル
2018.5/17(木)19:00 東京文化会館(小)
問:コンサートイマジン03-3235-3777
http://www.concert.co.jp/

CD
『パリのヴァイオリン・ソナタ』
キングレコード
KICC-1455 ¥3000+税
5/16(水)発売