ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2018

ルネ・マルタンが案内する“新しい世界(モンド・ヌーヴォー)”

池袋の東京芸術劇場も会場に加わり、池袋エリアと丸の内エリアで開催!

 今年から「ラ・フォル・ジュルネ」が生まれ変わる。正式名称を「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2018」とリニューアルし、従来の会場である東京国際フォーラムを中心とした丸の内エリアに加えて、東京芸術劇場、池袋西口公園、南池袋公園の池袋エリアが開催地に加わることになった。東京芸術劇場で有料公演の会場となるのは、コンサートホール(大ホール)とシアター・イースト、シアター・ウエストの3ヵ所。丸の内エリアと池袋エリアは地下鉄有楽町線一本で結ばれる。たとえば日中は丸の内エリア、夜は池袋エリアといったように、両会場をハシゴすることで、音楽祭の楽しみ方に新たな広がりが生まれるのではないだろうか。
 また、今回から電子チケット「Quick Ticket」の導入や、佐藤可士和デザインによる新ロゴマークの採用、「俺のフレンチ」とのコラボレーションによるオリジナル・フードメニュー販売等の新機軸も打ち出されている。

ルネ・マルタンが語る今回のテーマ

 さて、今回の音楽祭のテーマは「モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ」。革命や戦争など、さまざまな理由で祖国を離れ、外国へ移住した作曲家たちが主役となる。実はこのテーマ、すでに4年前から発表されていたものだが、当時は「亡命(exile)」と発表されていた。今回のテーマについて、この音楽祭の生みの親であるアーティスティック・ディレクター、ルネ・マルタンに話を聞いた。
「最初にこのテーマを思いついた頃は、まだ悲劇的な難民の問題がクローズアップされていませんでした。その後、多くの人々が紛争により祖国を離れ、ヨーロッパにたどり着き、移民は深刻な社会問題となりました。そのような状況で、このテーマが音楽祭にふさわしいものかどうか、とても悩みました。現在の悲劇的状況を音楽祭のために利用したと誤解されてしまうかもしれない。しかし、亡命者は何世紀にもわたって存在しており、移民の問題もずっと前から音楽史にあったものです。ですから、テーマはそのままにして、ネーミングをポジティブなものに変更したのです」
 ルネ・マルタンが最初にこのテーマを思いついたきっかけは、さまざまな名曲の背景に亡命があると気づいたことだという。
「たとえばショパン。ポーランドを離れ、その後、一度も祖国に帰っていません。パリで数多くの傑作を残しましたが、その多くには祖国とのつながりがあります。ときには作品に政治的なメッセージが込められていることもあります」
 「新しい世界へ」と聞くと、ついドヴォルザークの「新世界より」を連想してしまうかもしれないが、ドヴォルザークは数ある登場人物のひとりといったところ。ただ、ヨーロッパからアメリカに渡った作曲家はたくさんいるので、アメリカで書かれた曲が存在感を放っている。
「20世紀の芸術家にとってもっとも安全な場所は自由の国アメリカでした。当時の音楽の都はパリでしたが、パリはやがてナチスに占領されてしまいます」
 今回の音楽祭で主役となる作曲家を尋ねると、ショパン、ラフマニノフ、プロコフィエフ、コルンゴルト、バルトーク、マルティヌー、アルベニス、ドヴォルザークと、次々に名前が挙げられた。
「だれもが知る名曲もあれば、アイスラーの『ハリウッド・ソングブック』やヒンデミットの『ルードゥス・トナリス』のような珍しい曲もある。それがラ・フォル・ジュルネの魅力です。毎回テーマに沿って、野心的なプログラムも紹介したいと思っています」
 また、音楽祭の公式本「『亡命』の音楽文化誌」も発刊されるので、よりテーマを詳しく知りたいという方におすすめだ。
取材・文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2018年4月号より)

【公式本】
「亡命」の音楽文化誌
エティエンヌ・バリリエ(著)
西 久美子(訳)
アルテスパブリッシング
¥2400+税

 

 

 

Photo:M.Otsuka/Tokyo MDE

【profile】
ルネ・マルタン

フランス出身。世界各地で年間約1500もの公演を手掛けるカリスマ音楽プロデューサー。青少年期にジャズとロックに没頭。10代でクラシックの素晴らしさに目覚める。経営管理学と音楽を学んだ後、仏ナントに芸術研究制作センター(CREA)を創設して芸術監督を務める。1981年に南仏ラ・ロック・ダンテロンでピアノ音楽祭を創設し、ルプー、アルゲリッチ、キーシン、フレイレ、トリフォノフ、小曽根真ら世界的ピアニストを招聘。リヒテルからも信頼され、音楽祭を任された。95年にナントでクラシック音楽のイメージを揺るがす画期的イベント「ラ・フォル・ジュルネ」を開始。これらの功績により、世界各地で名誉ある勲章の受章なども多い。

【Information】
2018.5/3(木・祝)〜5/5(土・祝)
丸の内エリア(東京国際フォーラム、大手町・丸の内・有楽町 他)
池袋エリア(東京芸術劇場、池袋西口公園、南池袋公園 他)
問:ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 運営委員会事務局03-3574-6833
※ラ・フォル・ジュルネ TOKYOの詳細情報は下記ウェブサイトでご確認ください。 
http://lfj.jp/