いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2018開催

 4月28日から5月5日まで、金沢を中心に北陸三県で開催される「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2018」の記者会見が、2月20日に都内で開催された。
(2018.2/20 東京文化会館 Photo:I.Sugimura/Tokyo MDE)

前列左より:舘野 泉(ピアニスト)、前田利祐(音楽祭実行委員会会長)、池辺晋一郎(音楽祭チーフ・フェスティバル・アドバイザー)
後列左より:佐藤陽子(紀尾井ホール室内管弦楽団事務局)、山田正幸(音楽祭チーフ・プロデューサー)、三国 栄(音楽祭実行委員会会員)

 同音楽祭は、2016年まで9年にわたり行われていた音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ金沢(以下LFJ)」の終了に伴って17年にスタートし、今年が2回目となる。
 音楽祭実行委員会会長を務める前田利祐は、「昨年から始まったこの音楽祭は、石川県、金沢市、文化庁の支援や地元企業からの協賛を得て行われています。第1回はベートーヴェン・チクルスという格調高いプログラムでしたが、11万人くらいのお客様にご来場いただきました。今年は『ウィーンの風に乗って』と題したプログラム。金沢では、旨いものも観光名所もあるので、音楽とともに楽しんでいただきたいです」と述べた。
 続いて、チーフ・フェスティバル・アドバイザーを務める作曲家の池辺晋一郎が、金沢への想いと音楽祭への期待を語った。
「私自身、金沢をはじめ北陸地域とは非常に関わりが深く、オーケストラ・アンサンブル金沢(以下OEK)が出来た頃からコンポーザー・イン・レジデンスを務めましたし、現在まで十数年間、石川県立音楽堂の洋楽監督も務めています。金沢で音楽祭をやると、能や箏など地元の伝統が色濃く反映され、他の街とはひと味もふた味も違うものになる。加賀百万石前田藩の伝統の上に、美術、工芸、演劇などの文化的土壌がもともとこの街にはあったのだと思います。今年は『モーツァルト+ウィーン』がテーマですが、何とか楽しいものにして定着させ、全国区の音楽祭にしたいと思っています」

池辺晋一郎

 続いて、音楽祭チーフ・プロデューサーの山田正幸が公演の詳細を紹介した。今回の音楽祭には、4つのオーケストラが出演する。地元のOEKのほか、金沢での公演は初という紀尾井ホール室内管弦楽団(KCO)が参加。また、海外からはザルツブルク・モーツアルテウム管弦楽団(以下MOS)、アマデウス室内オーケストラの2団体が招聘されている。ウラディーミル・アシュケナージ指揮OEKの「ジュピター」(5/3)、リッカルド・ミナーシ指揮MOSの「ハフナー」(5/5)、広上淳一指揮KCOの交響曲第40番(5/3)などモーツァルトの交響曲、協奏曲を中心とした注目公演が並ぶ。ソリストは、オープニング・コンサート(4/29)に出演する森麻季、マリア・サバスターノ(以上ソプラノ)らのほか、菊池洋子、辻井伸行、モナ・飛鳥(以上ピアノ)、ヴェンツェル・フックス(クラリネット)、ライナー・キュッヒル(ヴァイオリン)など。室内楽やソロでは、ペーター・レーゼル(ピアノ)のリサイタル(5/3)、キュッヒルと福田進一(ギター)の共演(5/3)、フックスとMOSメンバーによるクラリネット五重奏曲(5/4)など多彩なラインナップが揃った。また、今年もチクルス企画として、13人のピアニストによりピアノ・ソナタ全曲演奏が行われる。そのほか、「能舞とモーツァルト」と題し能楽師の渡邊荀之助らが《皇帝ティートの慈悲》を舞うユニークな公演(5/4)や、ダンサーの田中泯がモーツァルトを踊る公演(5/2〜4)、池辺や新垣隆ら4人の作曲家による“モーツァルトひらめき大会”(5/2)も注目を集めそうだ。クロージングを飾るのは、ヘンリック・シェーファー指揮OEK&金沢レクイエム合唱団によるモーツァルト「レクイエム」(5/5)。また、市民オーケストラの祭典、地元の合唱団や国内外の吹奏楽団などが出演する参加型プログラムも多数予定されている。
 山田は「金沢の人は本物志向が強いところがありますので、単に名前で選ぶだけでなく、テーマにふさわしいオーケストラを集めるように努めました。地元のアーティストやアマチュアの皆さんもどんどん入れて、プロ・アマ混在の稀有な音楽祭にしたいと思っています」と音楽祭の意義を強調した。

舘野 泉

 「左手のピアニズム」(5/5)に出演予定で、この日の会見に出席した舘野泉は、以下のように述べた。
「2002年に病気で倒れ、04年から復活して左手のピアニストとして活動しています。最近では、左手のピアノ音楽が独自の領域として理解されるようになって、だいぶ市民権を得たかなという気持ちです。06年には『舘野泉 左手の文庫』という財団を立ち上げて助成金を集め、現在までに90曲くらいが誕生しています。今回、金沢でも、左手の音楽が皆さんにとって親しいものになっていくことを楽しみにしています。共演する月足さおりさんは、先天性の難病により今は左手だけで演奏している熊本のピアニストですが、非常に芸術性豊かな演奏家なので、ぜひ参加してもらいたいと考えました」
 江戸時代以来の伝統がいまも残る古都ながら、金沢21世紀美術館やOEKという新しいカルチャーをも受け入れ育んできた金沢の街。地域に根ざした音楽の祭典が展開されるゴールデンウィークとなりそうだ。

いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭
2018.4/28(土)〜5/5(土・祝) 石川県立音楽堂、金沢市アートホール、北國新聞赤羽ホールほか 福井・石川・富山エリア
※一部公演は、4/27、5/6にも開催
問:いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭 実行委員会事務局076-232-8111
http://www.gargan.jp/