ハンブルク・バレエ団 2018年日本公演 作品の見どころ

『椿姫』 『ニジンスキー』ガラ公演〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉

 “魂のための極上の食事”というものがあるなら、ジョン・ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエ団の舞台は、まさにそれだろう。高度な技術で磨かれたダンサーたち、どっしりした全幕作品のボリューム感、振付や演出のすみずみまで行き渡る鋭敏で繊細な感性。舞踊史に残るコリオグラファーとしてノイマイヤーが2015年に京都賞を受賞し、その記念来日公演から2年。文字どおり選りすぐりの3演目を携えての来日が、いよいよ実現する。

代表作『椿姫』と『ニジンスキー』

 そのひとつ『椿姫』は誰もが認めるノイマイヤーの代表作であり、ドラマティック・バレエの到達点を示す傑作中の傑作。高級娼婦マルグリットと青年アルマンの悲恋を描いたアレクサンドル・デュマ・フィスの青春文学を、同時代を生きたショパンの音楽ときらめくような踊りで描き出す作品は、バレエ・ファンやダンサー、批評家たちから最高級の賛辞を贈られてきた。ユルゲン・ローゼの美しい衣裳・美術で展開する19世紀パリの劇場や社交界の人間模様、ヒロインの心の鏡となる劇中バレエ『マノン』など、見どころは尽きないが、ことに見逃せないのは主役2人の心情や関係性を物語るパ・ド・ドゥ。愛の告白と嬉しい驚き、天にも昇るような相思相愛の至福。そして心がすれ違い、傷付けることでしか相手を確かめられない悲痛。バレエ芸術が可能にする、深い心理表現に魅了されること必至。

『椿姫』
Photo:Holger Badekow

 対して『ニジンスキー』は、孤高のダンサーの内面を、鋭くまた鮮やかに描き出す。天才は天才を知るというが、振付はもちろん、壮麗な舞台装置や衣裳も手がけ、伝説のダンサーの精神世界に分け入るありさまは、どこか神の視点に近いものさえ感じさせる。『シェエラザード』『ばらの精』『牧神の午後』など、ニジンスキーの光の部分の断片と交錯する、底知れない孤独の闇。その大いなる落差が生み出す圧倒的な美しさは、いちど観たら忘れられない衝撃と感動を観る人の心にもたらすのだ。

『ニジンスキー』
Photo:Kiran West

バレエに注いだ愛と憧れを描く〈ガラ〉

 そしてファンにはもちろん、ハンブルク・バレエ団初体験の人にも勧めたいのがガラ公演〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉だ。2018年に76歳を迎える振付家自身が構成・演出を行い、自ら舞台に出て語りも務めるこのガラは、単なる名場面集を超えた宝石のような1作。心浮き立つ『キャンディード序曲』から『くるみ割り人形』『ヴェニスに死す』、荘厳な『マーラー交響曲第3番』など、綺羅星のような代表作をちりばめた舞台は、ノイマイヤーの芸術を堪能させてくれるばかりでなく、彼が舞踊人生を通じてバレエに注いできた愛と憧れを、あふれるばかりに伝えてくれる。
 ゲスト・プリンシパルのアリーナ・コジョカルや、シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコら、おなじみの実力派ダンサーに加え、アンナ・ラウデール、アレクサンドル・トルーシュら進境著しい若手スターたちの活躍も大いに期待される今回。この機会にぜひとも劇場へ足を運びたい。
文:新藤弘子
(ぶらあぼ2018年1月号より)

〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉
Photo:Kiyonori Hasegawa

【Information】
ハンブルク・バレエ団 2018年日本公演

『椿姫』
2018.2/2(金)18:30、2/3(土)14:00、2/4(日)14:00 東京文化会館

ガラ公演〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉
2018.2/7(水)19:00 東京文化会館
2018.2/17(土)14:00 ロームシアター京都

『ニジンスキー』
2018.2/10(土)、2/11(日・祝)、2/12(月・休)各日14:00 東京文化会館

※公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
問:NBSチケットセンター03-3791-8888 http://www.nbs.or.jp/
  ロームシアター京都チケットカウンター075-746-3201(2/17のみ) http://rohmtheatrekyoto.jp/