オリ・ムストネン(作曲/指揮/ピアノ)

“3つの顔”を持つ異才のすべて

C)Outi Tormala

 作曲家として、指揮者として、そしてピアニストとして。「作曲と演奏における互いの影響は、音楽人生において欠かせない」と語り、いずれにおいても、卓越した能力を発揮するフィンランドの鬼才オリ・ムストネン。2月に来日し、ソロ・リサイタルと、自作を含めた弾き振りでのオーケストラへの客演を通じ、“3つの顔”を余さず披露する。
「ヒンデミットは自身を、作曲も指揮もやりヴィオラも弾く音楽家だと評しました。私も指揮者兼ピアニストとして、現代の作曲家たちと協働できるのはたいへん幸せなことです。かたや、優れた演奏家たちに自作を提供することも非常に刺激的。全ての経験が励みになり、勇気づけられるのです」

リサイタルでは、シューマン、プロコフィエフ、ベートーヴェンを

 リサイタルへ携えるのは、「創意に富んだ音楽を心から敬愛している」という、ピアニストであり、自作の指揮も手掛けた先人たちによる佳品。まず、幕開けに選んだシューマン「子供の情景」を「並外れていて、とても現代的。後世の多くの作曲家が子どもをイメージした作品を残しましたが、皆、彼の作品に感化されていると思います」と語る。
 そして、「彼の音楽なくして、今の自分は存在し得ない」と言い切るプロコフィエフの作品から、ソナタ第8番「戦争ソナタ」を。
「偉大な彼の作品の中でも、最も不朽の存在。雄大で時代を超越したような第1楽章は、同じ変ロ長調の交響曲第5番を連想させます。この作品の演奏は、常に素晴らしい旅のようです」
 後半は、ベートーヴェン。まずは「幼少の頃から特に親しんできた曲。エミール・ギレリスのレコードが、自宅にあったのを覚えています」という「ヴラニツキーのバレエ『森のおとめ』のロシア舞曲の主題による12の変奏曲」を。そして「彼の作品の中で独特」と語るソナタ第23番「熱情」で締め括る。
「ベートーヴェンの音楽を知るのは、一人の人間としての彼を知ることです。私はこれまで、ずっと彼の音楽を勉強し続けてきて、その人柄を知り尽くしているように感じます。つまり今の私にとって、楽聖は貴く大切な人なのです。その音楽は深い感動を呼び、限りない叡智に満ちています」

指揮者、ピアニスト、作曲家として京響と共演

 京都市交響楽団との共演では、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第3番」を弾き振り。そして、「フィンランド人の私にとって、特別な存在」と位置付けるシベリウスの「交響曲第2番」を指揮する。
「実は、私の自宅の近くにシベリウスが住んでいた家があります。そこを訪れる度に感銘を受け、強力な魂の存在を強く感じます」
 さらに、自作「弦楽オーケストラのためのトリプティーク」も披露する。
「元は3挺のチェロのための作品で、とあるアメリカ人紳士から委嘱され、チェロを愛した亡き奥様への贈り物として書きました。神秘から戦いへ、やがて力を得て法悦の結末へと向かう、人生の旅を象徴する3つの楽章から成ります」
 音楽好きの両親のもと楽器に囲まれて成長し、「音楽家になろうと意識したことはないが、他のどんな道も考えなかった」と語る。最後に音楽家としての目標をたずねてみた。
「偉大な作品を聴き、演奏することは“鬱蒼とした森”に分け入るようなものです。そして、その“森”に足を運ぶ度に、違う光景に出会い、新しい“驚き”を発見するはずです。これこそが音楽の偉大さなのです。傑作を聴く度に、少しずつその“驚き”と細部を理解していきます。これには決して終わりがありません」
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年1月号より)

ピアノ・リサイタル 
2018.2/10(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831
http://www.pacific-concert.co.jp/

京都市交響楽団 第620回 定期演奏会 
2018.2/16(金)19:00 京都コンサートホール
問:京都市交響楽団075-711-3110/京都コンサートホール075-711-3231
http://www.kyoto-symphony.jp/