【GPレポート】メシアン《アッシジの聖フランチェスコ》 

大オーケストラと声楽を操り、迫力ある音像と多彩な響きを実現

 メシアン畢生の大作、歌劇《アッシジの聖フランチェスコ》(演奏会形式)の全曲日本初演を3日後に控え、最終稽古がサントリーホールで行われた。
(2017.11.16 サントリーホール 取材・文:柴辻純子 Photo:M.Terashi/TokyoMDE)

 舞台上の管弦楽は約40種類の打楽器(今回は10人で演奏する)を含む巨大な楽器編成で、3台のオンド・マルトノはパイプオルガン横と2階客席左右に配置され、オルガン下の座席には120名の合唱が占めた。その中央に立つシルヴァン・カンブルランは、迫力の音量と多彩で豊かな音響を自在に操る。マエストロがこのオペラを指揮するのは、今回の公演で25回目。その回数は世界最多である。

パイプオルガン横で演奏されるオンド・マルトノ(小川遥)

本公演では3つのオンド・マルトノが使用されるが、うち2つは、2階客席内(RB及びLBブロック後方通路)で演奏される

 メシアンのこのオペラは、音楽と物語が深く結びつき、事象や感情が音楽で雄弁に語られ、演奏会形式でもその情景が容易に思い浮かぶ。3種類の鍵盤打楽器(シロフォン、シロリンバ、マリンバ)によるヒバリの声は何度も反復されるが、打楽器奏者の明晰な打鍵で繰り返されるたびに、鳥が姿を現すかのよう。

 第2幕第5景〈音楽を奏でる天使〉ではホール全体にこれまで聴いたことがないような神秘的な響きが広がり、第6景「鳥たちへの説教」ではカンブルランのエネルギッシュなタクトのもと、メシアンの鮮やかな色彩と躍動するリズムが強調され、様々な鳥たちが羽ばたく様子が描かれた。

 聖フランチェスコ役のヴァンサン・ル・テクシエは、2011年にカンブルランが指揮したマドリッド公演にも出演するなどマエストロの信頼が厚く、気品ある声とフランス語が美しく響く歌唱で説得力がある。
ヴァンサン・ル・テクシエ(聖フランチェスコ)

 彼以外は、カンブルランの意向でこのオペラを次世代につなぐために若手歌手が起用された。天使役のソプラノのエメーケ・バラートは、軽やかな明るく美しい声を響かせ、第8景〈死と新生〉での天から降り注ぐような清らかな歌声も印象的だった。
エメーケ・バラート(天使)

 ペーター・ブロンダー(重い皮膚病を患う人)、フィリップ・アディス(兄弟レオーネ)はじめ、オペラを知り尽くしたマエストロが起用した歌手たちの充実ぶりが光った。
ペーター・ブロンダー(重い皮膚病を患う人)
フィリップ・アディス(兄弟レオーネ)
左)エド・ライオン(兄弟マッセオ)
ジャン=ノエル・ブリアン(兄弟エリア)
妻屋秀和(兄弟ベルナルド)
左から)ヴァンサン・ル・テクシエ(聖フランチェスコ)、畠山茂(兄弟ルフィーノ)、ジョン・ハオ(兄弟シルヴェストロ)、妻屋秀和(兄弟ベルナルド)

 そして合唱(新国立劇場合唱団とびわ湖ホールアンサンブル)は、このオペラは声が楽器とともに新たな音響を作り出し、多層的に積み上げる。幕切れの輝きに満ちた合唱も神々しく圧倒的だった。

 カンブルランと読響は2006年12月の「トゥーランガリラ交響曲」から、今年1月に「彼方の閃光」を演奏するなどメシアン作品を継続的に取り上げてきた。本公演は、まさにその集大成であり、長年にわたってカンブルランとの間で作り上げてきた音楽の頂点に立つ公演となるだろう。

【Information】
読響創立55周年記念
メシアン:歌劇《アッシジの聖フランチェスコ》(全曲日本初演/演奏会形式)

指揮:シルヴァン・カンブルラン
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団、びわ湖ホール声楽アンサンブル

出演
天使:エメーケ・バラート
聖フランチェスコ:ヴァンサン・ル・テクシエ
重い皮膚病を患う人:ペーター・ブロンダー
兄弟レオーネ:フィリップ・アディス
兄弟マッセオ:エド・ライオン
兄弟エリア:ジャン=ノエル・ブリアン
兄弟ベルナルド:妻屋秀和
兄弟シルヴェストロ:ジョン・ハオ
兄弟ルフィーノ:畠山 茂

11/19(日)、11/26(日)各日14:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp/
11/23(木・祝)13:00 びわ湖ホール
問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136
http://www.biwako-hall.or.jp/