ノエ・乾(ヴァイオリン)

若きコスモポリタンがバロック・スタイルで「四季」に挑戦

C) Andrew Chiciak

 昨年初来日したヘルシンキ・バロック・オーケストラが、今年も芸術監督のアーポ・ハッキネンに率いられ来日する。ヴィヴァルディ「四季」のヴァイオリン・ソロで共演するのが、ベルギー出身のノエ・乾だ。
 1985年ブリュッセル生まれ。父は日本人、母はギリシャ人。13歳まで生地で学び、その後パリ国立高等音楽院とカールスルーエ音楽大学を首席で卒業。現在はデュッセルドルフ在住。日本語、フランス語、ギリシャ語はネイティブ、ドイツ語、英語も話すマルチリンガルだ。名前の「ノエ」は方舟のノアのフランス語読み(ギリシャ語でも同じ)。
 ヘルシンキ・バロック・オーケストラとは、昨年のばんだい高原国際音楽祭での出会いがきっかけとなり共演することに。普段はモダン・ヴァイオリンを弾いている彼だが、今回はA=415Hzでの演奏。バロック・ヴァイオリンに持ち替える。
「低いピッチもピリオド楽器も初めての経験ですが、何度も弾いてきた曲を今度はピリオド楽器で演奏することで、楽器の音色に新鮮な楽しみを見つけられると思います」
 初めての経験だからこそ楽しく弾けるという、すごいポジティブ・シンキングは、とてもナチュラルでまったく厭味がない。とはいえ、普段からバロックの勉強も続けている。
「数年前、バッハの無伴奏を録音しないかというオファーがあり、準備のために人づてにバロックの先生を紹介してもらったんです。いろいろ学ぶうちに、結局バッハはもっと勉強してからじゃないと後悔すると思い、録音は先送りしたのですが、バロック奏法はここ6年ほど勉強してきました」
 その先生というのがヘルガ・テーネ女史。かつてECMレーベルにクリストフ・ポッペンとヒリヤード・アンサンブルが録音した『モリムール』というアルバムに、仕掛け人としてその名があるので、興味のある向きはご確認あれ。
 ベルギーはクイケン兄弟らを生んだ古楽の中心地のひとつだが、その影響は全然ないのだそう。
「パリに移ったのが13歳でしたので、ベルギーではまだ基礎の習得に精一杯でした。バロックの奥が深いのは確かなので、その深みをもうちょっと磨いてみたいです。今回の経験も、モダンで弾く時にも絶対に役立つはずと思っています」
 そんな古楽のアプローチを経て、「四季」にも何か新しい視点を意識しているのだろうか。
「ハッキネンさんたちの『四季』を昨年聴く機会があったのですが、とてもレベルの高いアンサンブルだったので、彼らとの“対話”の中で何か生まれてくればよいですね。みなさんが知っている聴きやすい曲ではありますが、思いがけない発見があるのではないかと今から楽しみにしています」
 柔軟で多様な対応力のコスモポリタンに注目だ。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2017年12月号から)

ノエ・乾 × ヘルシンキ・バロック・オーケストラ
2017.12/1(金)19:00 紀尾井ホール
問:藍インターナショナル03-6228-3732 
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