年末の『くるみ割り人形』

バレエ団のカラーやスタイルを色濃く反映


 音楽界の年末の風物詩といえばベートーヴェンの「第九交響曲」だが、バレエ『くるみ割り人形』(音楽:チャイコフスキー)の上演も盛ん。あまたある公演の中からピックアップしてご紹介する。
 創立150周年を迎えたウクライナのキエフ・バレエがクリスマス・イブの日曜日に東京で昼夜2回公演を行う。故ワレリー・コフトゥンによる温かで親しみやすい演出は定評があり、ウクライナ国立歌劇場管弦楽団を帯同しているのも魅力だ。アンナ・ムロムツェワ&ヤン・ヴァーニャ、オレシア・シャイターノワ&デニス・ニェダクという気鋭たちの競演にも心惹かれる。
 10月にオープンしたカルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)初のバレエ公演となる谷桃子バレエ団の舞台にも注目したい。齊藤耀(クララ)、山口緋奈子(金平糖の精)、吉田邑那(ゆうな)(くるみ割り人形/王子)ら活きのいい踊り手が主演し、その周りを実力派の演技巧者が固める。老舗ならではの味わい深いステージになるだろう。福田夏絵指揮・東京ニューシティ管弦楽団の生演奏付きなのも嬉しい。
 東京バレエ団が現代バレエの巨星モーリス・ベジャール没後10年を記念して5年ぶりに上演するベジャール版にも要注目。巨匠が自らの少年期を回想するという異彩を放つ展開で、母への限りなき追慕やバレエへの惜しみない愛を物語る名作である。
 スターダンサーズ・バレエ団の鈴木稔版はユニークかつセンスがいい。設定を現代に読み替えた独自のストーリーと才気に富んだ振付が光り、少女クララが人形劇の人形たちの世界に入り込む冒険譚はスリリングで目が離せないし、感動的な幕切れには胸が熱くなるはず。演奏は田中良和指揮のテアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ。
 バレエ団のカラーやスタイルが色濃く反映される演目だけに見比べるのも一興だ。家族や大切な人と一緒に“くるみ”を観て聴いて安らいで、心穏やかに新年を迎えたい。
文:高橋森彦
(ぶらあぼ2017年12月号から)

スターダンサーズ・バレエ団
2017.12/9(土)14:00、12/10(日)11:30 16:00 テアトロ・ジーリオ・ショウワ
問:スターダンサーズ・バレエ団03-3401-2293 
http://www.sdballet.com/

東京バレエ団
2017.12/16(土)、12/17(日)各日14:00 東京文化会館
問:NBSチケットセンター03-3791-8888 
http://www.thetokyoballet.com/

谷桃子バレエ団
2017.12/17(日)15:00 カルッツかわさき
問:カルッツかわさき044-222-5223 
http://culttz.city.kawasaki.jp/

キエフ・バレエ
2017.12/24(日)12:00 16:00 東京国際フォーラム ホールA
問:光藍社チケットセンター050-3776-6184 
http://www.koransha.com/