シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団

年初から“耳が洗われる”刺激的なニューイヤー・コンサート


 「《こうもり》序曲」「南国のバラ」「雷鳴と電光」「美しく青きドナウ」などの曲名を見て、いつものニューイヤー・コンサートか…と思ったら大間違い。これらをカンブルラン&読響が演るとなれば、興味は数倍に膨らむ。何せ彼が振るといかなる名曲も積年の垢を落とした清新な音楽に変身。引き締まった構築と精妙な音のバランスが、楽曲の生気や隠れた魅力を浮上させる。ベートーヴェン、チャイコフスキー、マーラー等どれもがそう。今回はウィンナ・ワルツでそれが実現する。しかもラヴェル、デュカス、オッフェンバック、サン=サーンスという彼の母国フランスの作品が彩りを加える。この珍しい組み合わせもカンブルランの面目躍如。《天国と地獄》のカンカンがどうなるか楽しみだし、万人がエキサイト必至の《サムソンとデリラ》の〈バッカナール〉は、一流オーケストラの公演で聴く機会が少ないだけに、ぜひとも耳にしたい。
 さらには、人気ヴァイオリニスト・三浦文彰も出演。大河ドラマ『真田丸』のテーマ演奏で注目を集めた彼は、難関のハノーファー国際コンクールを史上最年少で制した実力を、ウィーン留学でいっそうブラッシュアップさせた。ヴィエニャフスキの佳品とワックスマンの「カルメン幻想曲」(超絶技巧曲!)を聴かせる今回は、その手腕を端的に味わう絶好機となる。
 最近ますますゴージャスな輝きを増す読響のサウンドで、こうした名曲を聴けるのも嬉しい限り。加えてカンブルランは、オペラの経験豊富な“語り上手”でもある。このハイセンスで新鮮なニューイヤー・コンサートは、ファンにもクラシック・ビギナーにもお薦めだ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2017年12月号から)

第203回 土曜マチネーシリーズ
2018.1/6(土)14:00
第203回 日曜マチネーシリーズ
2018.1/7(日)14:00
東京芸術劇場 コンサートホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
http://yomikyo.or.jp/