ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)

鬼才と精鋭たちの熱き共演


 クレーメルは“型通り”を好まない。演奏を通じて何か新しいものを創造したいと常に考えているのだ。20年前にバルト三国の若手奏者たちを集めて室内合奏団クレメラータ・バルティカを立ち上げたのも、外からの求めに応じるだけではなく、若手から刺激を受けつつ自らの音楽を追求し、発信したいと考えたからだろう。
 クレーメルは最近、リュカ・ドゥバルグという新たなインスピレーションの源を発見したようだ。11歳でピアノを始め、その後ピアノから離れていた時期があったにもかかわらず、アディリア・アリエヴァ国際ピアノ・コンクール優勝(2014年)、チャイコフスキー国際コンクール入賞(15年)とメキメキと頭角を現している。演奏スタイルは極めて個性的。自由な解釈を奔放な技巧で実現していく姿には、未だ飼いならされていないような野性味を感じる。クレーメルといえば、火花を散らす掛け合いでエキサイトするアルゲリッチとのデュオが有名だ。ドゥバルグともすでに共演を重ねているが、また違った丁々発止が楽しめることだろう。
 公演は2日。2月14日はクレメラータ・バルティカが入り、「セレナータ・ノットゥルナ」、ヴァイオリン協奏曲第3番、ピアノ協奏曲第12番とそれぞれがモーツァルトを披露するほか、ベートーヴェン「セリオーソ」も聴ける。2月18日はドゥバルグがバッハ「トッカータ ハ短調 BWV911」、クレーメルがヴァインベルクの無伴奏曲を弾いた後、シューベルト「ソナチネ第3番 D408」「幻想曲ハ長調 D934」の2曲で二人が“一騎打ち”する。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2017年12月号から)

リュカ・ドゥバルグ&クレメラータ・バルティカとの共演 
2018.2/14(水)19:00
デュオ・リサイタル 
2018.2/18(日)14:00
サントリーホール
問:ミュージックプラント03-3466-2258 
http://www.mplant.co.jp/