ヴァハン・マルディロシアン(指揮)

年末に相応しい2大名曲を一挙に演奏


 2014年に東京フィルを指揮して日本デビューを果たし、翌年のN響への客演でも絶賛を浴びた今注目のマエストロ、ヴァハン・マルディロシアン。室内楽に定評があるピアニストとしても知られ、名ヴァイオリニストのイヴリー・ギトリスに「最高のパートナー」と認められるなど、世界の巨匠たちと共演を重ねてきた。
「器楽奏者からの転向組が多いのですが、自分は10代の頃から指揮者志望で、ピアノは音楽的な経験を豊かにするための修行のようなつもりで続けてきました。06年にニューヨークでクルト・マズアさんに学んだのをきっかけに、本格的に活動を開始し、現在では仕事のほぼ9割以上は指揮です。でもピアノが好きなので依頼があれば弾きます(笑)」
 1975年アルメニア生まれ。キリル・ペトレンコやヤニック=ネゼ・セガンなど、才能ある新たなスターたちがしのぎを削るアラフォー世代指揮者のひとりだ。
「他の人が何を振っているのか、どんなサウンドに仕上げているのか興味はあります。同じスコアを使用していながら自分とは全く違う音に出会うと、素直に面白いと思うし、それをヒントにもしたい。たとえ古典派の音楽であっても、やるからにはそれまでにない新しくて現代的なもの、自分らしいものを生み出したいのです」
 そんな彼は今年の年末、このところ定期的に来日して各地で大成功を収めているキエフ国立フィルハーモニー交響楽団を初めて指揮する。
「先ずはそれぞれのオーケストラが持っている伝統の“音”をベストの状態で引き出すことを考えます。その上で、自分の知識や経験から学んだこと、アイディアなどをうまくメンバーに伝えられるように努力して、一緒に音楽を作り上げる。このやり方は最初にマズアから教わったことであり、どの楽団に対しても同じです」
 当日はベートーヴェンの「第九」にドヴォルザークの「新世界より」を加えた豪華なプログラム。
「この時期の『第九』が特別な意味を持っていることは知っています。恐らく日本のお客さんはステージ上の私たちよりもこの曲をたくさん聴いていることでしょう。そして知られ過ぎているという点では『新世界より』も同様。どちらも人気曲だけにそこから新しいメッセージを紡ぎ出すのは至難の業ですが、スコアとじっくり向き合って、何とかそれを実現させたい。多くの偉大な作曲家にとって9番目が最後の交響曲というのもミステリアスで象徴的。一年の終わりを締め括る公演として、これ以上相応しいプログラムはないと思います」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ2017年11月号から)

第九&新世界
ヴァハン・マルディロシアン(指揮) キエフ国立フィルハーモニー交響楽団
2017.12/28(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:テンポプリモ03-3524-1221 
http://www.tempoprimo.co.jp/