日本フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会2017 第九交響曲

全力投球の“歓喜”に浸る熱い年末

 日本フィルの年末「第九」は常にホットだ。まずはおなじみ小林研一郎の公演。ハイテンションで振幅の大きな表現に、日本フィルとその合唱団等々が全力で呼応した「第九」は、圧倒的な高揚感と感動を求める人の期待に、必ずや応えてくれる。コバケンは今年77歳だが、驚いたのは昨年大晦日の「ベートーヴェン全交響曲連続演奏会」(オケは別団体)。8つの交響曲を振った後にパワフルな熱演を披露し、「第九」が“炎のマエストロ”の炎を最大限に燃焼させる事実を改めて知らしめた。それゆえ「第九」演奏の手兵=日本フィルとの公演は、今回も見逃せない。
 もう一人、大井剛史の登場も要注目。1974年生まれの彼は、2008年ペドロッティ国際指揮者コンクールで第2位を獲得後、ニューフィル千葉(現・千葉響)や山形響のポストを歴任し、現在佼成ウインドの正指揮者を務めている。彼の強みは、オペラ、バレエや内外の舞踊公演での豊富な経験。よって生まれる劇的で生命力溢れる音楽は、さらなる開花を予感させる。今回の「第九」が飛躍の契機となる可能性も十分だけに、この公演にも熱視線を注ぎたい。
 前半の演目も興味深い。コバケンの公演では、石丸由佳のオルガン独奏でバッハの「トッカータとフーガ 二短調」等が披露され、各会場のパイプオルガンの名器の響きを堪能させる。大井の公演は「ジークフリート牧歌」。「第九」の復活演奏を行って普及の礎を築いたワーグナーの作品を置いた意味あるプログラミングだ。なお歌手陣には日本を代表するスターがズラリ。日本フィルもますます重層感を増しているだけに、今年も期待は大きい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2017年11月号から)

大井剛史(指揮)
2017.12/17(日)18:00 サントリーホール
2017.12/21(木)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール

小林研一郎(指揮)
2017.12/23(土・祝)18:00、12/26(火)19:00 横浜みなとみらいホール
2017.12/25(月)19:00 サントリーホール
2017.12/27(水)、12/28(木)各日19:00 東京芸術劇場 コンサートホール

問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
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