ヤクブ・フルシャ(指揮) 東京都交響楽団

ファイナル・ステージもマエストロならではのプログラムで

ヤクブ・フルシャ C)堀田力丸

 東京都交響楽団で8年間にわたって首席客演指揮者を務めてきたヤクブ・フルシャ。そのステージの掉尾を飾るのはマルティヌーとブラームスを組み合わせた意外性のあるプログラムだ。
 マルティヌーの交響曲第1番とブラームスの交響曲第1番というダブル「第1番」プロは、この指揮者ならでは。フルシャは母国チェコを代表する20世紀の作曲家マルティヌーにとりわけ力を注いできた。この交響曲第1番は1942年の作品。つまり、ナチス侵攻を逃れてマルティヌーがアメリカに渡った翌年に書かれている。したがって、そこに悲劇的な色調を聴きとることも可能だろう。一方で、作品からはマルティヌーならではの躍動感やダイナミズム、機知も感じられる。実演で聴ける機会は貴重だ。
 一方、ブラームスの交響曲第1番は名曲中の名曲。現在、ドイツのバンベルク交響楽団の首席指揮者を務めるフルシャにとって、ブラームスもまた重要なレパートリーとなっていることだろう。フルシャは「自分とブラームスの関係はゆっくりと成熟してきた」と語っている。当初はエモーショナルな面に焦点を当てていたが、次第に曲の論理的な構造へと関心が向くようになったというのだ。考え抜かれた解釈を聴かせてくれるにちがいない。
 欧州で躍進著しいフルシャだが、都響でのポストは本人のキャリアにも大きな意味があったはず。記憶に残るラスト・ステージになるのでは。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2017年11月号より)

第845回 定期演奏会 Bシリーズ
2017.12/16(土)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057 
http://www.tmso.or.jp/