宮崎陽江(ヴァイオリン)

シューベルトの“詩”と“ヴィルトゥオージティ”に光を当てて

C)馬場道浩

 アメリカに生まれ、幼少期をフランスで過ごしたのちに桐朋学園大学、ジュネーヴ高等音楽院で学んだ宮崎陽江は、現在スイスに拠点を置き、欧州・日本双方で音楽文化の普及・発展に取り組むヴァイオリニストである。
 今年はシューベルトのデュオ作品や五重奏曲「ます」、さらに彼の歌曲「魔王」を編曲したエルンストの超絶技巧作品が並ぶプログラムで東京・札幌・旭川公演を行う。共演者にはピアニストでサンタ・チェチーリア音楽院教授のマルコ・グリサンティや、ベルン交響楽団チェロ首席奏者のコンスタンタン・ネゴイタら実力派が揃った。
「曲目を決めるときは様々なことを考えますが、去年ベートーヴェンのコンチェルトを演奏し、次はブラームスに取り組みたいと考えたとき、その間に位置するシューベルトに取り組んでおくべきだろうと思ったことがきっかけです」
 これまでに宮崎はフランスの作曲家やベートーヴェンを中心にヨーロッパを巡るような幅広いレパートリーを演奏してきた。
「幼少期をフランスで過ごしたこともあるかもしれませんが、フランスからスタートして様々な国の音楽を見ていくべきだと思ったのです。国ごとに作品の特徴や音色など、楽譜に広がる風景は全く違いますから、それを感じとり、音にすることがとても大切です」
 シューベルトといえば歌曲やピアノ作品での演奏会は多いものの、弦楽器作品をこれだけまとめたプログラムはなかなかない。
「ヨーロッパではオール・シューベルト・プログラムは結構ありますが、日本では確かに少ないですね。今回は“歌曲王”シューベルトの面はもちろん、彼の求めたヴィルトゥオージティに光を当てました。彼は協奏曲こそ書きませんでしたが、今回演奏する『華麗なるロンド』は特に協奏曲を思わせる要素がとても強いのです。彼のこうした部分はあまり注目されませんが、シューベルトは短い人生の中であれだけの交響曲を書いていますし、とてもエネルギーに溢れた人。そんな側面を今回は表現したいと思っています」
 シューベルトの“ヴィルトゥオージティ”をクローズアップしたプログラムとなっているが、その中にもやはり“歌”を感じるという。
「彼の音楽には言葉があります。シューベルトの作品を演奏するのであればどんなジャンルでも彼の歌曲の詩を研究することがとても大切です。今回ピアノを弾いていただくグリサンティさんは特にシューベルトに造詣が深いので、色々なことをディスカッションして曲を作り上げています。『ます』や『魔王』の元となった歌曲の詩から受けるインスピレーションや力強いエネルギーを表現していきたいです」
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2017年11月号より)

宮崎陽江 室内楽の調べ
ヴィルトゥオーゾ・シューベルト
2017.11/20(月)18:30 旭川市大雪クリスタルホール音楽堂
2017.11/23(木・祝)14:00 札幌コンサートホールKitara(小)
問:オフィス・ワン011-612-8696
2017.11/26(日)14:00 トッパンホール
問:コンサートイマジン03-3235-3777
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