【記者会見】映画監督・河瀨直美がオペラ初演出、プッチーニ《トスカ》まもなく上演

 10月15日の新潟公演を皮切りに、東京、金沢、魚津、沖縄と全国5都市で上演される全国共同制作プロジェクト、プッチーニ:歌劇《トスカ》(新演出)。初日に向け稽古が進む中10月3日、演出の河瀨直美、指揮者の広上淳一と大勝秀也、ソリストらが出席し、記者会見を行った。
(2017.10/3 東京芸術劇場 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)

前列左より:アレクサンドル・バディア(カヴァラドッシ)、ルイザ・アレブレヒトヴァ(トスカ)、大勝秀也(指揮) 広上淳一(指揮)、河瀨直美(演出)
後列左より:与儀 巧(スポレッタ)、三浦克次 (堂守)、森 雅史 (アンジェロッティ)、三戸大久(スカルピア)

 今回の上演は、日本が世界に誇る映画監督の一人、河瀨直美が、自身初となるオペラ演出に挑むことが話題。河瀨自らが制作した映像が流れる他、気鋭の建築家・重松象平が手がける舞台美術も注目される。河瀨はいまの心境を次のように語る。
「映画と違い楽譜があり、台本にある台詞の一語一句変えることができず、音楽も必ずそこにリズムがついてくる。その中で解釈を含めてオリジナリティを出せるか考え、お客様に何か新しい風を吹き込むことができたらと稽古を進めています。
 私が《トスカ》を観た際、スカルピアがかっこいいと感じ、いまスカルピアの稽古に力をいれています。彼の愛情や独裁的な部分は、世の男性が持っている本質的なものではないのか思うのです。トスカとカヴァラドッシ役のお二人は、二人の普段の関係性がそのまま役につながっており、いまとても楽しい稽古場です」

河瀨直美

 
 河瀨版《トスカ》は、舞台を原作のローマから古代日本の雰囲気が漂う“牢魔”というとある集落に移し、死と生をテーマに、悲劇の中にも未来へ向けた“希望”を描き出す。
「日本の『いつかのどこかの集落』という設定にすれば、人間の普遍的な感情が見えてくるのではないかと思います。この世界で人間は悪いやつだと思っていますが、どの時代も宗教やルールの中で悪いことしてはいけないと学びます。ただ人間の本質は動物なので危険が迫ると刃を向ける。それが過剰に反応すると国家間、民族間の争いになっていくわけです。芸術によって世界から戦争がなくなったことはないのですが、芸術が希望や微かでも一筋の光を見いだす力になればと信じて、いま稽古を進めています」

 チラシの題字は河瀨自らが書いたもの。
「私の映画作品はいつも自分で題字を書いています。チラシデザインの打ち合わせをしている際に、筆で書きました。トスカは鷹みたいな女性で、激しさの中に情熱がある。私の頭の中のトスカをイメージして文字にしました」

チラシには河瀨が書いた題字と鷹をイメージした羽が描かれている

 指揮者や歌手たちは皆、河瀨版《トスカ》は「新しい」と口を揃える。
「畑の違う監督ならではの感覚で色んなアイディアを提供してもらい、我々は新鮮な気持ちで舞台創りをしている。僕らに制約を求めず、音楽を尊重した中でそれぞれの歌手の良さを引き出しています。才能のある方とのお仕事がこんなに面白いんだということをお客様と共有できる舞台になりつつあることが一番嬉しい」(広上淳一)
「河瀨さんの感性や着眼点はとても新鮮。《トスカ》とはこういうものだというルーティーンのように思っているが、いま新しい風が吹いている。河瀨さんの考えを歌手たち、プッチーニとつなげ、お客様へと橋渡しのような仕事ができることが嬉しい。本当に面白い《トスカ》になると思います」(大勝秀也)
「今回スカルピアは初役です。これまで抱いていたステレオタイプのスカルピア像を一番最初の稽古でぶちこわされました」(三戸大久)
「スポレッタ役は、稽古中ではほとんど触れられることのない小さい役ですが、河瀨さんは一言一言質問を投げかけきて、役に生命を吹き込んでいく。こんなに重要な役だったのだと実感しました」(与儀巧)

大勝秀也(左)、 広上淳一(右)

 指揮台に立つのは、広上(東京、金沢公演)と大勝(新潟、魚津、沖縄公演)。東京音楽大学時代、一学年違いの先輩後輩という間柄で、今回34年ぶりに再会し一つの作品を創り上げる。
 広上は、「34年間、国際的なオペラの修行を積んできた成果がものすごく現れていて、先輩としては個人的にとても嬉しい。英独伊の語学を自由に操れる大勝さんは、稽古場を勇敢に大胆に取り仕切り、その姿は大学時代の彼とは全く別人。ゲストのお二人、アルブレヒトヴァさん(トスカ)、バディアさん(カヴァラドッシ)も歌の実力もさることながらとても頭の良い方で、現場に溶け込んでくれています。本当にいいヤツです(笑)。舞台の意気込みがプラスに作用していて感謝しています。また我が国を代表する若手歌手、これから10年後の日本のオペラ界を背負って立つ方々が全力で取り組んでいるので、その姿もぜひ楽しみにしていただきたい。東京以外の会場にもぜひ足を運んで、オーケストラの違いも味わっていただきたい」と本公演にかける思いを語った。


【公演情報】
全国共同制作プロジェクト
プッチーニ:歌劇《トスカ》
全3幕・日本語字幕付 イタリア語上演

演出:河瀨直美
指揮:大勝秀也(10/15,11/12,12/7)、広上淳一(10/27,10/29,11/8)
管弦楽:オーケストラ・アンサンブル金沢(10/15,11/8)
    東京フィルハーモニー交響楽団(10/27,10/29)
    群馬交響楽団(11/12)、琉球交響楽団(12/7)
合唱&児童合唱:各地の合唱団

配役 トス香(トスカ):ルイザ・アルブレヒトヴァ
   カバラ導師・万里生(カヴァラドッシ):アレクサンドル・バディア
   須賀ルピオ(スカルピア):三戸大久
   アンジェロッ太(アンジェロッティ):森 雅史
   堂森(堂守):三浦克次 スポレッ太(スポレッタ):与儀 巧
   シャル郎(シャルローネ):高橋洋介 
   看守:原田勇雅 他

2017.10月15日(日)14:00 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
問:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル025-224-5521
http://www.ryutopia.or.jp/

2017.10月27日(金)18:30、10/29日(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296
http://www.geigeki.jp/

2017.11月8日(水)19:00 金沢歌劇座
問:石川県音楽文化振興事業団076-232-8111 http://ongakudo.jp/
  金沢芸術創造財団076-223-9898 http://www.kanazawa-arts.or.jp

2017.11月12日(日)14:00 富山/新川文化ホール
問:新川文化ホール0765-23-1123
http://www.miragehall.jp/

2017.12月7日(木)19:00 沖縄コンベンションセンター
問:沖縄県文化振興会098-987-0926
http://www.okicul-pr.jp/