神尾真由子(ヴァイオリン)

同世代の若い仲間たちと室内楽に挑戦

C)大窪道治
 2007年に第13回チャイコフスキー国際コンクールで優勝して以来、国際的な活躍を続けるヴァイオリニスト、神尾真由子。15年に開催され大好評だったジャン・ワン(チェロ)、キム・ソヌク(ピアノ)とのトリオコンサートに続く今回の「室内楽プロジェクト」では、同世代のメンバーが集まり、マーラーとブラームスのピアノ四重奏曲、そしてシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」が演奏される。
「ピアノの佐藤卓史さんと、以前からシューベルトの『ます』をやりたいと話していたので、今回それが叶って嬉しいです。他の曲については、佐藤さんが“神尾さんに合うと思うから”と選んでくれました」
 今回集ったメンバーはそれぞれが様々な領域で活躍する奏者たち。縁がつながっての集まりだという。
「ヴィオラを担当してくれる横溝耕一さんは同級生で、高校の時にはじめて組んだクァルテットのメンバーでもあったんです。現在はN響の第1ヴァイオリン奏者を務めているので、ヴィオラをお願いするのは迷ったのですが、快く引き受けてくれました。チェロの山上薫さんは以前ブラームスの『二重協奏曲』で共演したことがあります。コントラバスの髙橋洋太さんは初共演です。横溝さんがご紹介くださりました。メンバー全員が同世代で室内楽をやるのは初めてなので、とても楽しみです」
 近年は室内楽に積極的に取り組むようになった神尾だが、昔は室内楽に対して“恐れ”のようなものを感じていた。
「師事していた原田幸一郎先生の東京クヮルテットのメンバーとしてのご活動を間近で見ていたので、ずっとソロを弾いてきた私が安易に手を出していい領域ではないと思っていたのです。呼吸や音色、空気感など、本当に様々なことを共演者と一緒に追求しなくてはなりませんから。ただ、様々な場で機会をいただくうちに、とても楽しく演奏できるようになりました」
 昨年はブラームスのソナタ全曲に取り組むなど、レパートリーを拡大している神尾。5月には「宗次コレクション」からストラディヴァリウス1731年製“ルビノフ”を貸与され、新たなステップを踏み出した。
「弾かせていただいた瞬間から魅了されました。ただ、あまりにもよく響くので、室内楽の時に私の音が目立ち過ぎてしまう、ということもあって。ですから以前よりもバランスに敏感になりました」
 縁がつながって誕生した同世代のアンサンブル、しかも以前から演奏を希望していた楽曲によるコンサートということで、新しい神尾真由子の音楽を聴くことができそうだ。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2017年10月号より)

神尾真由子 室内楽プロジェクト Vol.2
2017.11/3(金・祝)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:アスペン03-5467-0081 
http://www.aspen.jp/