セルゲ・ツィンマーマン 無伴奏ヴァイオリンリサイタル

神童のDNAを受け継いだ俊英

C)Franz Hamm

 「完全なる奇跡」。弱冠9歳でデビューし、卓越した技巧と瑞々しい感性、しなやかで自然な音楽づくりで、耳の肥えた故国ドイツの聴衆をして、こう唸らしめたヴァイオリニスト、セルゲ・ツィンマーマン。26歳となった今、さらなる深みと人間性を併せ持った俊英が、バッハの無伴奏作品という小宇宙へ対峙する。
 世界的な名ヴァイオリニスト、フランク=ペーター・ツィンマーマンを父としてケルンに生まれ、5歳で楽器の手ほどきを受け始めて、わずか4年後には、モーツァルトの協奏曲でオーケストラと共演してデビュー。10代にしてバンベルク交響楽団、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団など、欧州の著名楽団とも共演を重ねた。父から受け継いだ音楽性のみならず、自身の個性をも存分に反映した名演で、聴衆を魅了。2010年に開かれたキッシンゲンの夏音楽祭では、名手レオニダス・カヴァコスの代役として急遽、メンデルスゾーンの協奏曲を披露して絶賛された。翌年11月には、日本の聴衆の前へ初お目見え。ネーメ・ヤルヴィ指揮のNHK交響楽団と共演している。
 そんな俊英ヴァイオリニストが、たった1人でステージに立ち、真正面から挑む、バッハの無伴奏作品。“ヴァイオリニストにとっての聖書”と位置付けられる全6曲のうち、今回は、ソナタ第1番と第3番、有名な「シャコンヌ」を含むパルティータ第2番を弾く。「演奏家の人間性そのものを投影する」とされる佳品に、彼はどんな自分を映し出すのか。その瞬間を、ぜひ確かめてみたい。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2017年9月号より)

2017.10/28(土)16:00 杉並公会堂
問:杉並公会堂03-5347-4450 
http://www.suginamikoukaidou.com/

他公演(ソナタ第3番・パルティータ第2番のみ)
2017.10/31(火) フィリアホール(045-982-9999)