アンナ・ネトレプコ(ソプラノ) スペシャル・コンサート in JAPAN 2017

世界を席巻するディーヴァのステージが再び実現!

アンナ・ネトレプコとユシフ・エイヴァゾフ
C)Marco Borrelli

 アンナ・ネトレプコが還って来る!
 昨年、日本で11年ぶりにリサイタルを行ったネトレプコ。その内容は、まさに今、世界の主要な歌劇場を席巻している彼女らしい、多彩なものだった。チレアのオペラ《アドリアーナ・ルクヴルール》の有名なアリア〈私は神の卑しいしもべです〉での、清潔で透明な世界から始まり、ヴェルディの《イル・トロヴァトーレ》の〈穏やかな夜〉での芯の強い表現力、そしてプッチーニ《蝶々夫人》の〈ある晴れた日に〉でのドラマティックな演技力。それらすべてが、現在、世界から求められているネトレプコの魅力を表現していた。
 また、同行したご主人、テノールのユシフ・エイヴァゾフとのデュエットによるヴェルディ《オテロ》の一場面〈すでに夜もふけた〉も、まさにこのオペラ全編を見ているような深い感動に満たされたものだった。
 思い返せば、ネトレプコの若い日の声を日本の私たちは知っている。名匠ゲルギエフが選んだ歌手たちによる公演でのネトレプコは、まだ初々しい、そして可憐な声のソプラノだった。しかし、その時から、その表現力や意志の強さを感じさせる声に、将来、彼女はきっと大きな舞台で活躍するだろうと確信した人も多かったに違いない。その後は、やはりその予想通りに、世界中の歌劇場に出演して活躍を始めた。特にニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)では、ヴェルディの《椿姫》をはじめとして、イタリア・オペラを中心にまさにディーヴァと言ってよい存在感を示し、ルネ・フレミングの次の時代のMETを担う存在として認められたと言って良いだろう。そのMETにおける人気ぶりは、遠く日本にまで伝わって来ている。
 さて、今回の「アンナ・ネトレプコ スペシャル・コンサート in JAPAN 2017」だが、東京と大阪の日程は決定しており、再びエイヴァゾフと共演する。指揮はミハイル・タタルニコフが担当する(管弦楽:東京公演 東京フィル/大阪公演 関西フィル)というところまでは発表されているのだが、曲目に関しては、本稿執筆時点ではまだ未定ということである。果たしてどんな作品が選ばれるのか。おそらく、昨年とはダブらないようなプログラミングがなされるだろうから、またネトレプコの新しい一面を知ることが出来るに違いない。
 そして、昨年、会場を最も沸かせたのは実はアンコールだった。あえてその曲目は書かないが、今年もそのアンコールが歌われるだろうか? と、今から期待している方もいるに違いない。そこにも単なるオペラ歌手というだけでなく、真のエンターテイナーとしてのネトレプコの姿を感じることが出来た。
 いま絶頂期にある歌手が2年も続けて日本でコンサートを開くということはほとんどこれまでなかった。まさに世界を席巻している声とは、こういう声なのだ。それを聴くのはとても大事であるし、またとても興味深いことなのである。ちょっとでも気になる方は、ぜひこの公演に駆けつけてほしい。そして、ネトレプコの魅力に圧倒されてほしい。
文:片桐卓也

2017.9/28(木)、10/3(火)各日19:00 東京オペラシティ コンサートホール
10/12(木)19:00 大阪/ザ・シンフォニーホール
問:カジモト・イープラス0570-06-9960
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