セルゲイ・カスプロフ(ピアノ)

ソナタと変奏曲がもたらす深遠な世界

C)Kana Tarumi
 「音楽に迷いを持たず、楽器の助けを借りぬこと」。演奏にとって、何が最も大切かと尋ねたら、セルゲイ・カスプロフはこう答えた。作品への深い洞察と確かな技巧で人気を呼ぶ、ロシアの若きピアニスト。初秋の日本へ降り立ち、注目のリサイタルで、豊かなコントラストに彩られた独創的な響きを紡ぐ。
 6歳でピアノ、12歳でオルガンを始め、ホロヴィッツの弾くラフマニノフを聴いて、「演奏とは何かを悟った」。モスクワ音楽院に学び、古楽奏法も専攻。ジャズやロックにも造詣が深く、「今日では、クラシックよりも音楽の本質に近い」とも。鬼才アファナシエフは「現代の若手で一番」と激賞している。
 「プログラム構成においては、音楽的な論理に基づくよう、心掛けている」と語るカスプロフ。今回は、ベートーヴェンの第23番「熱情」とリストのロ短調にベルクの「作品1」を挟んだ3つのソナタに、ハイドン「アンダンテと変奏曲ヘ短調」を添える。個性的なラインナップへ俊英が見出した「論理」とは? 答えはぜひ、ご自身の耳でお確かめいただきたい。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2017年9月号より)

2017.9/9(土)14:00 東京文化会館(小)
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