東京二期会オペラ《ばらの騎士》記者会見

 愛知県芸術劇場・東京文化会館・iichiko総合文化センター・東京二期会・読売日本交響楽団・名古屋フィルハーモニー交響楽団の共同制作となる、R.シュトラウスのオペラ《ばらの騎士》が東京、愛知、大分の3ヵ所で上演される。英国で毎夏行われる有名なグラインドボーン音楽祭との初の提携公演ということで話題の公演だ。7月13日、都内で記者会見が行われた。登壇者は、セバスティアン・ヴァイグレ(指揮者)、リチャード・ジョーンズ(演出家)、丹羽康雄(愛知県芸術劇場館長)、山口毅(公益財団法人東京二期会事務局長)。
(Photo:H.Yamada/Tokyo MDE)

左より)丹羽康雄、セバスティアン・ヴァイグレ、リチャード・ジョーンズ、山口 毅

 丹羽館長は「愛知で《ばらの騎士》を上演するのは、2001年のメトロポリタン歌劇場(MET)の来日公演以来」と紹介、「3つの団体と3つの劇場が、それぞれの団体の持ち味を生かし最上級のオペラを提供したい」と語った。
 続いて、山口事務局長は「グラインドボーン音楽祭との初の提携公演。初来日となるリチャード・ジョーンズさんは演劇とオペラの両方で優れた演出家。彼の“日本バージョン”の《ばらの騎士》の完成に向けて、歌手たち全員が練習に励んでいる。共同制作オペラとして、来年度は札幌文化芸術劇場を含めての《アイーダ》を予定しているが、今回の《ばらの騎士》は5つのホール(次年度から現在改装中の神奈川県民ホール・兵庫県立芸術文化センターも提携)が手を結んでの共同制作の第一歩。これからも多くの人にオペラを楽しんでもらいたい」と述べた。

セバスティアン・ヴァイグレ

 今回、東京公演を指揮するセバスティアン・ヴァイグレは、さきごろMETでも同作品を振ったばかり。《ばらの騎士》の音楽面について次のように述べた。
「とても好きなオペラ。“愛”について、“(移りゆく)時間”について、“多彩に繰り広げられる人間模様”を表現していて、オペラに必要なすべての要素が詰まっている。特別な瞬間が随所にあり魅力を感じている。R.シュトラウスの他のオペラ《サロメ》や《エレクトラ》のようなエッジの効いた作品と異なり、《ばらの騎士》はコメディーとして書かれていて、ワルツの旋律など美しい旋律に溢れている点が優れていると思う」
 読売日本交響楽団との共演については、
 「この作品は“軽やかさ”と“明晰さ”が重要。読響とはこれまでにも共演して、指揮者への反応が良いオーケストラだと感じている。優れた演奏ができると思う」と抱負を述べた。

リチャード・ジョーンズ

 イギリスを代表する演出家のリチャード・ジョーンズは、自身「個人的にもとてもやりたいと思っていた作品」と述べ、このオペラについての作品観を次のように語った。
「マテリアルの点で最高級の作品。曲の表現の幅が広いし、複雑でありながらも洗練されている。このオペラは、第1幕は古き良きウィーン、第2幕は言うなれば裕福な人物たちを描き、第3幕では、(登場人物たちの)不思議な行動を描く、といったように、3つの異なる世界が表現されている。私としては3つの幕に相応しい異なったセットを用意したいと考えている」
 ホフマンスタールの書いた台本については、
「テキストの内容が素晴らしい。よく考えられたコメディーで、モリエールからの影響がうかがえる。色々な人物が登場するのも面白いが、とくにオックスに注目したい。彼は下品でありながら、華やさを持ち、そして正直な人物だと思う」
 ラストの若き愛人オクタヴィアンに去られる元帥夫人マルシャリンの場面は、
 「とくにセンチメンタルだとは思っていない。マルシャリンは30歳台前半なのだし、年老いているわけではない。オクタヴィアンと別れてからも、“愛の生活”をすべて捨て去るわけではない」とコメントした。
 また、今回の日本人キャストに関して、
「皆それぞれ素晴らしいが、多くの歌手が細部にわたり譜読みをしているところに感心した」。 
 最後に“オペラ初心者”に向けてのメッセージ。
 「物語として分かりやすいし、ドラマの進行のテンポも速く、楽しめる作品。最後に内省的な部分もあり、とてもオリジナリティに溢れたオペラ。初めてオペラを観る人にとっても満足してもらえると思う」と述べた。

左より)セバスティアン・ヴァイグレ、家田 淳(通訳/演出助手)、リチャード・ジョーンズ

【公演情報】
二期会創立65周年・財団設立40周年記念公演シリーズ
グラインドボーン音楽祭との提携公演《ばらの騎士》
東京二期会・愛知県芸術劇場・東京文化会館・iichiko総合文化センター・読売日本交響楽団・名古屋フィルハーモニー交響楽団 共同制作

指揮:セバスティアン・ヴァイグレ(東京)/ラルフ・ワイケルト(愛知・大分) 
演出:リチャード・ジョーンズ
管弦楽:読売日本交響楽団(東京)/名古屋フィルハーモニー交響楽団(愛知・大分) 
合唱:二期会合唱団

出演
元帥夫人:林 正子(7/26,7/29,10/28)/森谷真理(7/27,7/30,10/29,11/5)
オックス男爵:妻屋秀和(7/26,7/29)/大塚博章(7/27,7/30,10/29,11/5)/狩野賢一(10/28)
オクタヴィアン:小林由佳(7/26,7/29,10/28)/ 澤村翔子(7/27,7/30,10/29,11/5)
ゾフィー:幸田浩子(7/26,7/29,10/28)/山口清子(7/27,7/30,10/29,11/5)
ファーニナル:加賀清孝(7/26,7/29,10/28)/清水勇磨(7/27,7/30,10/29,11/5) 

【東京公演】
7/26(水)18:00、7/27(木)14:00、7/29(土)14:00、7/30(日)14:00 東京文化会館
問:チケットスペース03-3234-9999/二期会チケットセンター03-3796-1831
【愛知公演】
10/28(土)、10/29(日)各日14:00 愛知県芸術劇場 大ホール 
問:愛知県芸術劇場052-971-5609
【大分公演】
11/5(日)13:00 iichiko総合文化センター iichikoグランシアタ 
問:iichiko総合文化センター097-533-4004
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