大友直人(指揮) 東京交響楽団


 大友直人の邦人現代曲への取り組みには、一つの主張を感じる。「現代音楽は難しい」というイメージを打破し、同時代を生きる私たち日本人が素直に楽しめるメロディやハーモニーを積極的に客席に届ける――そんな信念を。
 名誉客演指揮者を務める東響の第99回東京オペラシティ定期は、大友の姿勢がよく表れたプログラムだ。まずは芥川也寸志、黛敏郎、團伊玖磨という人気作曲家たちが1953年に結成し、5回の演奏会を通じて戦後の作曲界を牽引した「三人の会」――現代音楽のレジェンドといってもいい活動――にフォーカスする。「弦楽のための三楽章『トリプティーク』」は日本的プリミティヴィズムがモダンな感性とドッキングした、芥川の代表作。中間楽章では鄙びた子守歌も聴こえてくる。團伊玖磨「管弦楽幻想曲『飛天繚乱』」は音聲菩薩(おんじょうぼさつ)という天女のさまを音楽化したもの。華麗な舞や笛の音などが、煌びやかな管弦楽によって彩られていく。大友はこの曲を91年に初演している。黛敏郎の「饗宴」は日本風メロディがジャジーなリズムと融合し、強烈なエネルギーを発散する。バーンスタインにも影響を与えたと言われるほどダイナミックな曲で、第1回「三人の会」で初演された。
 後半は“今を生きる音楽”。泉鏡花の原作を黛まどかが台本化し、千住明が音楽を付けたオペラ《滝の白糸》は、2014年の金沢初演時から評判を呼び、その後も再演を重ねている。今回はうち第3幕を、大友をはじめとする初演時のキャスト(ソプラノ:中嶋彰子、メゾソプラノ:鳥木弥生、テノール:高柳圭)でおくる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2017年7月号から)

第99回 東京オペラシティシリーズ
8/20(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
http://tokyosymphony.jp/