ルイージが読響と特別演奏会〜読響サマーフェスティバル2017

 1959年生まれのファビオ・ルイージは、シャイーやゲルギエフ(53年生まれ)、ラトル(55年)に続き、そして同年生まれのライバルともいうべきティーレマンと並び、世界の指揮者界をリードする最重要アーティストの一人。現在、小粒ながら個性的な舞台でいまや欧州を代表するチューリヒ歌劇場と、メトロポリタン歌劇場という大西洋両岸の中核都市のオペラ座で中心的な役割を果たし、過去にはドレスデンの名門ゼンパー・オーパーでも名を馳せた。今年からデンマーク国立響の首席指揮者、来年からはフィレンツェ歌劇場の音楽監督もスタートするなど、モテぶりも相変わらずだ。
 ルイージの演奏に一度でも接すれば、その理由も分かるだろう。華麗なるバトンテクニックと情熱的な指揮姿で、会場をあっという間に高揚感に包み込む。イタリアの古都ジェノバ生まれ。国際海洋都市の開放感とでもいうのか、どんなオケを振っても濃密な歌心があふれ出る。舞台も束ねねばならないオペラでは緻密に運ぶ一方、曲によっては変幻自在にテンポを切り替え、そんな時には聴き手も一瞬たりとも気が抜けないライヴとなる。
 日本とのつながりも浅くない。関連団体との来日の他にPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)にも何度も携わり、N響とも共演の度に話題を呼んでいる。セイジ・オザワ松本フェスティバルへの登場も恒例化してきた。
 そして今年の夏、いよいよ読響との共演が実現する。R.シュトラウスの「ドン・ファン」「英雄の生涯」を柱とした、持ち味が十分に発揮されるプログラムなのも嬉しい。ルイージのシュトラウスと言えば、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団(シュターツカペレ・ドレスデン)との来日でサントリーホールを満艦飾に塗り替えた2009年の体験を鮮やかに思い出す。複雑に絡まり合う声部を手際よく手繰り寄せながら、うねるような流れを作り出してくれるに違いない。密度の濃い2曲の間にハイドンの交響曲第82番「熊」を挟み、音楽のエッセンスに目先を変えるのは、絶妙な箸休めといったところか。
 暑い夏が、更にスリリングに燃え上がる一日となるだろう。
文:江藤光紀

Barbara Luisi (C) BALU Photography

◆読響サマーフェスティバル2017 ルイージ特別演奏会
2017年8月24日(木) 19:00 東京芸術劇場
2017年8月25日(金) 15:00 横浜みなとみらいホール

指揮=ファビオ・ルイージ

R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
ハイドン:交響曲第82番「熊」
R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

一般発売:5月20日(土)
チケット料金:S席6,000円 A席5,000円
学生(25歳以下)席 2,000円(横浜みなとみらいホールのみ)