シモーネ・ヤング(指揮) 読売日本交響楽団

強靭に描かれる20世紀前半の対照的名作

 今や日本でもおなじみのシモーネ・ヤングが、読響と初共演を果たす。しかもメインがR.シュトラウスの「アルプス交響曲」ゆえに注目度は高い。
 ヤングは「“女性”指揮者」の呼称を不要にした実力者。2005〜15年ハンブルク国立歌劇場の総裁及びハンブルク・フィルの音楽総監督を務め、ウィーン&ベルリン・フィル、ウィーン国立歌劇場等の一流どころに多数客演している。今回特に目を向けたいのが、ドイツ後期ロマン派とオペラでの実績。なぜなら、スペクタクルな「アルプス」も、本質的には登頂者の1日を細密に描いた心象劇だからだ。その点ヤングは、ドラマティックで起伏の大きな表現が持ち味だし、バイエルン国立歌劇場の《エレクトラ》《サロメ》《影のない女》、昨年の東京二期会での《ナクソス島のアリアドネ》など、シュトラウス・オペラで賞賛されている。そんな彼女と華麗で高機能の読響の顔合わせとなれば、迫真的描写の深層に迫る名演が期待される。
 前半のプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番では、ベフゾド・アブドゥライモフの独奏に熱視線が注がれる。1990年ウズベキスタン生まれの彼は、アメリカで学び、ゲルギエフ、デュトワやミュンヘン・フィル、ボストン響等と共演している期待株。2009年ロンドン国際ピアノ・コンクール優勝時に聴衆を熱狂させ、デッカでの協奏曲デビューCDで鮮烈な演奏を聴かせているプロコフィエフの3番ならば、強靭かつ洗練された彼の本領が存分に発揮されるに違いない。近い時期(6年前)に書かれた「アルプス」との対比を含めて、興味が尽きないコンサートだ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年6月号から)

第569回定期演奏会 6/24(土)18:00 東京芸術劇場 コンサートホール
第17回大阪定期演奏会 6/26(月)19:00 フェスティバルホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp/