チャン・ユジン(ヴァイオリン)

大切なのは作曲家の意図を探り、しっかりと伝えることです

©BONSOOK KOO
 2001年から3年ごとに開催され、アジアを代表する国際コンクールへと成長している仙台国際音楽コンクール。昨年のヴァイオリン部門の覇者チャン・ユジン(韓国)が、6月に東京と仙台で優勝記念リサイタルを開く。
 第6回コンクールファイナルの審査では、ストラヴィンスキーの協奏曲を演奏し、栄冠を勝ち取った。コンクールのライヴCDで聴くことができるその自由でカラフルな演奏には、聴いているこちらも自然と微笑んでしまう楽しさがある。
 リサイタルの曲目は、メンデルスゾーン「ソナタ」(1838)、グリーグ「ソナタ第2番」、ストラヴィンスキー「ディヴェルティメント」、シベリウス「6つの小品」(抜粋)、サン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオ―ソ」。共演はピアノの小澤佳永。
「プログラム作りは、まず何よりも自分がアーティストとしてぜひ取り組みたいと思える作品を選ぶこと。そして、演奏される機会は少なくともお客さまには聴きやすい作品を選ぶようにしています。シベリウスの『6つの小品』は情感豊かでとてもノスタルジックな作品ですが、意外と演奏される機会が少ない作品のひとつ。遊び心あふれるメンデルスゾーン。聴く人を興奮させるストラヴィンスキー。バラエティーに富んだ聴きやすいプログラムなので、あまり難しく考えずに楽しんでいただければと思います」
 あまり有名すぎない作品を選ぶ理由には「隠れた名曲を発掘する責任が、若いアーティストにはあると考えているから」。そして、演奏で一番大切なのは、「音楽に奥深く分け入って作曲家の意図を探り、その解釈を聴く人にしっかりと伝えるように演奏すること」と答える知的なアーティストだ。実際、現在はボストンのニュー・イングランド音楽院で音楽学の博士号を取得すべく勉強中。演奏解釈を深めるために学んでいるという。
「想像や推量だけではなく、きちんとした知識に裏打ちされた作曲家の意図、時代背景、様式をロジカルに勉強したいと考えています。音楽学を勉強することで見識が広がり、自由な演奏解釈を得ることができると思います」
 キュートなルックスに知的なアプローチ、そして演奏の喜びがあふれ出るような自由なパフォーマンス。楽しみな新星の聴き逃せない一夜だ。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ 2017年5月号から)

第6回仙台国際音楽コンクール優勝記念演奏会
チャン・ユジン(ヴァイオリン部門優勝)
6/23(金)19:00 浜離宮朝日ホール
6/25(日)14:00 日立システムズホール仙台(仙台市青年文化センター)
問:仙台市市民文化事業団コンクール推進課022-727-1872
http://www.simc.jp/

CD
『チャン・ユジン 第6回仙台国際音楽コンクールヴァイオリン部門優勝』
仙台市市民文化事業団/フォンテック
FOCD9732 ¥2400+税
※このCDの読者プレゼント(本人サイン入り)がございます。詳しくは本誌P.199をご覧ください。