高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 高関健の常任指揮者として3シーズン目は、彼が得意とするブルックナーで始まる。今回、高関はブルックナーの交響曲第3番(1877年第2稿)を取り上げる。
 ブルックナーの交響曲第3番には作曲家自身による3つの稿が遺されている。1873年に完成され、ワーグナーに献呈されたのが第1稿(ゆえに『ワーグナー交響曲』と呼ばれることがある)。しかし、この第1稿は、ウィーン・フィルに演奏不能と烙印を押された。ブルックナーは、初演を実現させるため、大きな改訂を行い、77年になんとか初演にこぎつけたのが第2稿である。その後、交響曲第8番の改訂を中断し、89年に交響曲第3番の再改訂つまり第3稿を完成させる。高関が選んだ第2稿は簡潔化された第3稿よりも多くの音楽的素材を残している。アーノンクールやバレンボイムもこの第2稿を録音。楽譜や資料の研究に精通し、ブルックナーを得意とする高関が、ブルックナー本来の姿を聴かせてくれるに違いない。
 前半には武満徹の「3つの映画音楽」と堀米ゆず子をソリストに迎えてベルクのヴァイオリン協奏曲が演奏される。弦楽オーケストラのための「3つの映画音楽」は、最近では「弦楽のためのレクイエム」と並んで最も演奏される武満作品となっている。「3つの映画音楽」のなかの「黒い雨」は死と再生の音楽であり、それは“ある天使の思い出”として書かれたベルクのヴァイオリン協奏曲につながる。ベテラン堀米ゆず子の深い洞察に満ちた演奏が楽しみだ。
文:山田治生
(ぶらあぼ 2017年4月号から)

第306回 定期演奏会
5/10(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp/