仲道郁代、横山幸雄 モーツァルト ピアノ協奏曲とソナタの夕べ

贅沢にして貴重な、名ピアニストの競演

 この公演は、仲道郁代、横山幸雄、ピアノ、モーツァルトの各ファンはもとより、万人が興味津々だろう。何しろ日本を代表する人気ピアニスト2人が、共にモーツァルトの「ソナタ K.310」を弾き、「4手のためのソナタ K.381」で連弾を行い、仲道が協奏曲第20番、横山が協奏曲第24番を弾き振りするのだから、垂涎の企画というほかない。管弦楽はシアター オーケストラ トーキョー。
 パリで直面した母の死への哀しみを映す(とされる)イ短調の人気作「K.310」で、名手2人の表現を聴き比べるのは実にエキサイティング。これは昨年7月、軽井沢で2人が行った日本モーツァルト協会創立60周年記念『ピアノ・ソナタ全曲演奏会』で実現した試みだが、今回遂に東京で体験できる。彼らには珍しい協奏曲の弾き振りもむろん必見。しかもモーツァルトにとって特別な短調の2曲(協奏曲では両曲のみ)を続けて聴けるのが嬉しい。さらには、短調尽くしの深みの中で、共演姿も楽しみな4手の愛らしいソナタが一服の清涼剤となる。紀尾井ホールでの開催も贅沢だし、全800席ゆえに早めに手を打ちたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年7月号から)

7/21(木)19:00 紀尾井ホール
問:メイ・コーポレーション03-3584-1951
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