ミハイル・プレトニョフ(指揮) ロシア・ナショナル管弦楽団

世界屈指のオーケストラで聴くロシア音楽の神髄

 名ピアニストが指揮者としても活動する例は珍しくないが、ミハイル・プレトニョフのように自らのオーケストラを創設して率いる例はまれだろう。ピアニストはピアノを前に自分の思うがままに音楽を奏でることができる。しかし指揮者は自ら音を発することができない。常にオーケストラという集団との共同作業によってしか音楽を作ることができないのが指揮者の宿命。であれば、そのオーケストラさえも自ら作ってしまえばどうか。1990年に設立されたロシア・ナショナル管弦楽団は、そんな偉才の理想が形をとったオーケストラともいえる。
 この7月、七夕の夜にプレトニョフとロシア・ナショナル管弦楽団が聴かせてくれるのは、ロシア音楽を代表する3人の作品。グリンカの《ルスランとリュドミラ》序曲は、オーケストラの高い技量を鮮やかにデモンストレーションする機会となるにちがいない。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番では、注目のピアニスト、牛田智大がソロを務める。稀有な才能を持った天才少年としてセンセーションを巻き起こす牛田智大は、1999年生まれ。もうまもなく“少年”から“青年”と呼ぶのがふさわしい年齢になる。肉体的にも精神的にも、そして音楽的にも、目を見張るような成長を遂げつつあることだろう。メイン・プログラムはラフマニノフの交響曲第2番。ラフマニノフの管弦楽作品の代表作として、近年ますます演奏機会を増やしつつある名曲である。情感豊かでスケールの大きな演奏を堪能したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年5月号から)

7/7(火)19:00 文京シビックホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp


他公演
6/28(日)奈良県文化会館、7/4(土)シンフォニア岩国、7/5(日)アルファあなぶきホール
7/8(水)サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)、7/11(土)愛知県芸術劇場コンサートホール
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