反田恭平(ピアノ)

圧倒的なリスト演奏を聴かせる驚異の新鋭登場!

 リストの音楽が放つ強烈な志向性を、圧倒的な構築力と詩情をもって表出するピアニストが現れた。反田恭平、20歳。7月22日、日本コロムビアからリリース予定のデビュー・アルバム『リスト』は、リスト後期の「水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ」を軸に編まれた作品集。音楽が血潮を吹きあげているかのような、鮮やかで熱気溢れる演奏に驚かされる。
 「リストは特に好きな作曲家。弾き始めると曲に集中しすぎて、気が付くと演奏が終わっています」そう語る反田は、2012年の日本音楽コンクールの覇者。
「コンクールで優勝すること。それは14歳から始まった挑戦です。僕の育った家庭では、父親が音楽への道に進むことに大反対でした。ピアノを弾くと大音量でテレビをつけるような父なので、よく喧嘩もしましたね。そんな父が『コンクール優勝』を条件に音楽高校の学費を出すと言ってくれたのです。半年間で受けられるコンクールを片っ端から受け、いずれも最高位と優勝を勝ち取りました」
 自ら進路を切り開いて入学した桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)3年時に、上述のとおり日本音コンでも1位に輝いた。高校生での優勝は同コンクール11年ぶりの快挙。翌年、優勝者を対象に行われたマスタークラスで、M.ヴォスクレセンスキーと出会う。
「4時間の公開レッスン終了後、すぐに先生が楽屋に来てくださり、『モスクワ音楽院で勉強しないか』と声を掛けてくださいました。桐朋に特待生で入学していましたが、留学を即決しました」
 ヴォスクレセンスキーはリストの系譜に連なるピアニストだ。
「この流派はフォルムを大事にしています。楽曲の形式を徹底的におさえつつも、にじみ出るものこそが奏者の持つ才能だ、という考え方です。先生は『大事なのは弾き方、歌い方、そして見せ方・魅せ方だ』と。リスト自身も、どうしたら聴衆を魅了できるかをよく知っていた天才的な音楽家だったと思います」
 しなやかに揺れる反田の漆黒の長髪は、リストへの“敬愛の証”だという。
 録音で使用したのは、1912年製のニューヨーク・スタインウェイCD75。
「コントロールは難しいですが、弾くたびに新しい発見を与えてくれます。タッチの繊細な変化にも応えてくれるので、音色のヴァリエーションが広がりました」
 この5月にイタリアで行われたチッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクールでは、古典派部門で優勝に輝いた。9月にはバッティストーニ指揮、東京フィルとラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」を、そして円光寺雅彦指揮、新日本フィルとチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を披露する。勢いに乗る反田の活躍に注目だ。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年7月号から)

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