牧野正人(バリトン)

豪華な顔ぶれによる、内容満載の楽しいステージです!

 「都心から電車で30分の文化都市」立川は、「オペラファンが熱い」ことでも有名な街。立川オペラ愛好会の主催、立川市地域文化振興財団の共催で開かれるガラ・コンサート『名歌手たちの夢の饗宴』も、はや5回を数えるという。その牽引役は藤原歌劇団の名バリトン、牧野正人。今回はこの大ベテランがメールで抱負をじっくり語る。
「いつも僕は自分の舞台に、オペラ初体験の方も積極的にお誘いするようにしているんです。オペラ・ファンを増やすという目的もありますが、いろいろと新鮮で素朴な感想がいただけますから。たとえば、先日の《ファルスタッフ》では『声出して笑って良いんですね!』なんて言われましたし、《トスカ》の時には『感動しました。でもオペラって最後みんな死んじゃうんですね』と考えもしなかった感想を漏らされたりもしました。オペラは詩と音楽が融合し、声やオーケストラの美しさを味わえる芸術の玉手箱です。今回のコンサートは耳に馴染みのある名アリアや人気の重唱が満載のステージですから、敷居が高いなどとおっしゃらず、気軽にお出かけいただければと思います」
 確かに、オペラに初めて触れるタイミングは人さまざま。牧野が歌の道を志したのはどういうきっかけから?
「郷里の浜松でアルトサックスを習っていて、地元の音楽高校に進学を希望したのですが、サックスの指導者がいないと判りました。でも、そこで『歌でも歌ってみないか?』と声をかけられ、半ば強引にレッスン室に連れ込まれて〈赤とんぼ〉を歌わされました。すると先生が『イ・・イイじゃないか!』と。そこで、こちらも半信半疑のままレッスンに通い始めたのですが…。歌に本格的に取り組むきっかけは、高校時代に出逢ったカラヤン指揮の《ラ・ボエーム》のレコードで聴いた、パヴァロッティのハイCです!」
 それから年月を経たいま、オペラ界の大御所として大活躍の牧野。今回のプログラムならではの歌声の魅力とは?
「このステージには毎年レギュラーで出演させていただいていますが、面白いところは、所属団体の違いで普段あまり共演のチャンスの無い歌い手たちが同じステージに立つことでしょうか。東京では滅多に無い機会だと思いますよ。また、僕自身は『日本の人気三大テノール』(村上敏明・樋口達哉・笛田博昭)と同じ舞台に立てるのも楽しみです。彼らが歌う〈女心の歌〉や〈誰も寝てはならぬ〉にご注目を! また、ソプラノの〈歌に生き、愛に生き〉もよく知られたメロディですね。私もグノーの《ファウスト》のアリアや、今や大プリマドンナとなられた砂川涼子さんとヴェルディの《シモン・ボッカネグラ》から劇的な父と娘の二重唱を歌います。どうぞご期待下さい!」
取材・文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年5月号から)

第5回 立川オペラ愛好会 ガラコンサート 名歌手たちの夢の饗宴
5/24(日)14:00 たましんRISURUホール(立川市市民会館)
問:たましんRISURUホール042-526-1311