TACT/FESTIVAL 2015 『眠れない… ―L’insomnante』『アサニシマサ~魔法の呪文』

ユーモアとイマジネーションに溢れた2作品

 純粋に素晴らしい舞台芸術は、大人も子どもも垣根を越えて楽しめる。そんな舞台を提供し続けているTACT/FESが今年もやってくる。
 まずはフランスのクレール・リュファン『眠れない…』。変わったタイトルだが、じつは驚くほどタイトル通りの作品だ。一人の女性が眠れずにベッドで何度も寝返りをうつ。横には怪しいチェロ弾きがいて、おまけに天井には一面に敷き詰められた枕たち。そんな悪夢のように美しい情景から様々な意表を突く展開があり、いつしか観客も摩訶不思議な世界に引き込まれてしまう。ちなみに本作には昨年の同フェスで舞台上の全てが崩れ去るちょっとイカれた『リメディア』という作品で度肝を抜いたカミーユ・ボワテルも参加している。
 さてもうひとつは、高精度の映像とダンスをミックスさせたら当代随一のジョゼ・モンタルヴォの作品。昨年の『トロカデロのドン・キホーテ』でも満載の仕掛けで観客を驚かせたが、今回の作品タイトルは『アサニシマサ』。意味がわからない。それもそのはず、魔法の呪文なのである。これをアフリカ調のリズムに乗せて唱えていると、象やらヒョウやらフラミンゴやら、舞台の壁一杯に動物たちが現れて、舞台上のダンサー達と踊り出す。しかも現実にはあり得ないような、奇想天外なコラボレーションの数々だ。
 夢と現実が渾然となる。想像力が、見たことのない世界に羽ばたく翼になる。それが、舞台芸術の素晴らしさなのだ。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)

『眠れない… ―L’insomnante』5/3(日)〜5/6(水・休) 東京芸術劇場シアターイースト
『アサニシマサ~魔法の呪文』5/3(日)〜5/6(水・休) 東京芸術劇場シアターウエスト
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 
http://www.geigeki.jp