原田幸一郎(ヴァイオリン)& 毛利伯郎(チェロ)

世界で実績を積んだ仲間が集う、豪華な六重奏

 来る5月、ヴァイオリンの原田幸一郎が主宰する『至高の室内楽 MOSTLY KOICHIRO vol.2』が開催される。出演は、原田に加え、神尾真由子(ヴァイオリン)、神谷美千子(同)※、磯村和英(ヴィオラ)、鈴木学(同)、岩崎洸(チェロ)、毛利伯郎(同)という7人の豪華メンバー。この特別なコンサートに出演する原田と毛利の2人に話をきいた。
 本公演は原田の70歳記念でもあり、毛利も今年65歳。共に長いキャリアを誇る。
原田(以後 H):「26歳で東京クヮルテットを始めてから44年。2013年で弦楽四重奏の活動から離れた後は、教えることを主体に様々な活動をしてきましたので、あまり時間の経過を感じませんね」
毛利(以後 M):「アメリカにハワイ経由で行く時代に渡米して色々と活動し、読響でも30年。充実していたなと思います」

昔からの仲間と一緒に

 今回は「昔からの仲間と一緒に室内楽をやろう」という企画。
H:「磯村和英さんとは東京クヮルテット、岩崎洸さんとは東京チェンバー・ソロイスツで一緒に活動。日米で色々な演奏会をやりました。毛利さんを含めて、室内楽を熟知したベテランです」
 これに原田の弟子である若い世代の2人が加わる。
H:「鈴木学さんは、太い音を出すいい奏者。神尾真由子さんは世界的な一流ソリストで、私が一番好きなヴァイオリニストですね。テクニックもさることながら、パッションが圧倒的に凄い。彼女は、私が例年関わっている『いしかわミュージック・アカデミー』では第2ヴァイオリンを弾いているのですが、非常に目立つセカンド(笑)。それに彼女は本企画(MOSTLY KOICHIRO)の発案者でもあります」
M:「神尾さんとは石川で何度か共演しましたが、控えるべきところは控え、出るべきところはもの凄い勢いで出てくる。あんなセカンドはいないですね」
 ちなみに、全員が桐朋で学び、鈴木を除く5人がジュリアードに留学してもいる。

六重奏の魅力

 主演目は、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番とシェーンベルクの「浄夜」。
H:「ブラームスの1番は、六重奏曲の中では最も有名(特に第2楽章)ですから、当然入れたかったですし、『浄夜』は、シェーンベルクが12音に移る前の非常にロマンティックな曲。複雑で難しいのですが、やりがいのある作品です」
M:「原田さん、岩崎さんとは、2曲ともアメリカ時代に演奏しました。ブラームスの六重奏はこのジャンルの名作。もう、魅力的という以外に形容のしようがない。本当にいいプログラムだと思います」
 弦楽六重奏には、四重奏とは違った魅力がある。
H:「四重奏は1つの楽器のような緻密さが求められますが、六重奏は各々が個性を出し合う面白さがあります」
M:「オーケストラ的な面と弦楽四重奏的な面の両方があり、四重奏より2人多い分の音の広がり、チェロが2本入ることによる力強さもあります」
 このほか、音楽界や教育界の現状など話題は尽きなかったが、最後に今後の活動についてうかがった。
H:「今度からニューヨークの学校でも教えます。この歳になって新しいことを始めるのは大変ですが、思い出深い場所なので楽しみです」
M:「私は小さい子を教えることにも興味があります。チェロはそういう先生が少ないので、これから少しずつ時間をかけていきたい」
 今後、2人がより教育に力を注ぐことになりそうなので、今回はとても貴重な公演ともいえそうだ。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)

至高の室内楽 MOSTLY KOICHIRO vol.2 
5/3(日)14:00 紀尾井ホール
問:アスペン03-5467-0081 
http://www.aspen.jp 
※編集註:神谷美千子は取材後に出演が確定。