英国ロイヤル・オペラ

贅沢の極み! 絶好調のロイヤル・オペラが魅せる2大名作

 オペラを“心から愛し、尊ぶ国”イギリス。300年前にはヘンデルが大活躍、20世紀ではモーツァルトの再評価を推進、歌の女神カラスを常に温かく迎え、王族ハーウッド卿が発刊した雑誌も『Opera』である。官も民もこぞってオペラに目を向け、最上級の“大人の楽しみ”として享受している。
 そして勿論、英国ロイヤル・オペラも、世界に冠たる五大歌劇場の一つとして光り続ける存在。凄腕の音楽監督パッパーノを得て、オペラ界での“格”をますます高めている。つい先日もライブシネマの《さまよえるオランダ人》が日本の映画館で上映され、ファンを唸らせたばかり。伝統と栄光に輝きつつ、最先端の技術も導入するこの歌劇場の瑞々しさが確かに伝わってきた。

キーンリサイドの名演を堪能

 さて、その英国ロイヤル・オペラが9月に5年ぶりの来日公演を行う。演目は2つ。まずはヴェルディの傑作《マクベス》に注目。原作は勿論シェイクスピアの悲劇だが、オペラでは雷鳴轟く舞台に魔女の大合唱が炸裂、夫人の〈夢遊病の場〉もマクベスとマクダフの一騎打ちも、イタリアの巨匠ならではの劇的な音楽で雄弁に描かれる。また、今回は女性演出家フィリダ・ロイドの舞台作りも必見。血の赤、欲望の黄金色、悪意の黒の3色がステージにひしめく中、イギリスの至宝たるバリトン、キーンリサイドが精悍に歌い演じるが、筆者が最も目を見張ったのは、3つの予言を聞いた彼の一瞬の“瞬き”。オペラ界の千両役者たる眼力で、武将の隠れた野望を見事に暴きだしていた。そしてマクベス夫人役はウクライナの新星モナスティルスカ。彼女の艶あるドラマティックな美声も日本の客席を圧倒することだろう。

ホルテン演出の先鋭的なステージ

 そしてもう一つはモーツァルトの人気作《ドン・ジョヴァンニ》。現地で2014年2月にプレミエになったばかりのプロダクションだが、演出家カスパー・ホルテン曰く、主人公の放蕩の騎士にとっての「真の地獄」とは「ほったらかしにされる孤独」であるという。だから彼は、次々と女性に手を出さずにはいられない。今回は映像も駆使する先鋭的なステージングが話題を集め、題名役にはイタリアの名手ダルカンジェロ、彼に喰らいつくエルヴィーラ役は米国の大歌手ディドナート、気高いオッターヴィオは名テノールのヴィラゾン、村娘ツェルリーナはまだ20代のレージネヴァ(樺太生まれ!)とキャスティングも華やか。2作とも振るパッパーノの敏捷な棒と併せて、「この上なく贅沢な舞台」を堪能してみたい。
文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)

《ドン・ジョヴァンニ》 Photo:ROH/Bill Cooper,2014 for Don G.

《ドン・ジョヴァンニ》 Photo:ROH/Bill Cooper,2014 for Don G.

《マクベス》
9/12(土)15:00、9/15(火)15:00、9/18(金)18:30、9/21(月・祝)13:30
東京文化会館
《ドン・ジョヴァンニ》
9/13(日)15:00、9/17(木)18:30、9/20(日)13:30
NHKホール

2演目セット券(S,A,B券):発売中 
全公演S〜D券:3/28(土)発売
問:NBSチケットセンター03-3791-8888 
http://www.nbs.or.jp