オペラ《ソラリス Solaris》〜藤倉大が初のオペラをパリで世界初演、勅使川原三郎が演出

 作曲家の藤倉大がポーランドの作家スタニスワフ・レムのSF小説『ソラリスの陽のもとに』をもとに作曲した自身初のオペラ《ソラリス Solaris》が3月5日、パリ・シャンゼリゼ劇場で世界初演された。シャンゼリゼ劇場、リール・オペラ座、ローザンヌ歌劇場 共同委嘱作品。演奏はアンサンブル・アンテルコンタンポランとIRCAMの電子音楽によるライヴ・エレクトロニクス。指揮はエリック・ニールセン。藤倉自らもエレクトロニクスの演奏に加わった。
 演出は世界的ダンサー・振付家の勅使川原三郎。勅使川原はそのほかにリブレット、舞台美術、振付、照明、衣装を担当、自らもダンサーとして出演。KARASの佐東利穂子、元パリ・オペラ座バレエのエトワール ニコラ・ル・リッシュらが共演した。《ソラリス》は7日にもシャンゼリゼ劇場で上演、続いて3月24、26、28日にリール歌劇場で、4月24、26日にはスイス・ローザンヌ歌劇場で上演される。

 世界初演を終えた藤倉からWEBぶらあぼに、次のようなコメントが寄せられた。

 製作に何年もかかったオペラ《ソラリス》ですが、今回、世界初演をパリのシャンゼリゼ劇場で終えました。3週間に渡る練習が毎日この劇場で行われました。
 僕もエレクトロニクスのミックスを本番で演奏するため、毎日練習に参加していましたが、この劇場はストラヴィンスキーの「春の祭典」やドビュッシーの「遊戯」なども世界初演された場所なので、ストラヴィンスキーやドビュッシーもおそらく自分の世界初演を前にして緊張していたのかなあ、なんて想像しながら初演の日に向けて過ごしていました。

 本番は全てが上手くいき、2日目の本番では1日目と結構テンポもフレージングも違い、それはまた素晴らしい演奏でした。全てが生である(エレクトロニクスも含め)オペラならではだなあ、と思いながら僕も聴き、見入っていました。

 毎日、監督の勅使川原三郎さんやニコラ・ル・リッシュさんを含め、ダンサー達との練習を見るのは本当にこの上ない幸せ、なんと贅沢なことなのでしょう。

 この世界初演で僕は多くを学びました。早く二作目のオペラに取り掛かりたいなあと思っています。

なお、原作となったレムの『ソラリスの陽のもとに』は、早川書房創立70周年記念作品として4月8日、早川文庫から発売予定。
ハヤカワ文庫 SF『ソラリス』
スタニスワフ・レム著/沼野充義訳 早川書房
1,080 円(税込) ISBN 9784150120009 【2015年4月8日刊行予定】

写真はすべて、2015年3月5日、シャンゼリゼ劇場での《ソラリス》世界初演から
(C)Vincent Pontet Permission from Théâtre des Champs-Elysées
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藤倉 大
http://www.daifujikura.com
勅使川原三郎/KARAS
http://www.st-karas.com
リール歌劇場
http://www.opera-lille.fr/
ローザンヌ歌劇場 
http://www.opera-lausanne.ch/

(c) Milena Mihaylova
(c) Milena Mihaylova
■藤倉大
1977年生まれ。15歳からロンドンに在住しジョージ・ベンジャミンらに師事。1998年のセロツキ国際作曲コンクール優勝をはじめ、ヒンデミット賞、ギガ・ヘルツ賞特別賞、尾高賞などを受賞している。近年の委嘱作品として、英フィルハーモニア管と名古屋フィルとの共同委嘱によるピアノ協奏曲、読売日響委嘱作品、IRCAMとのヴィオラ独奏と電子音楽のための作品(以上2009年)、シカゴ響の委嘱によるブーレーズの85歳を記念した作品(2010年)などがある。2011年2月、ドゥメダルに献呈した作品が世界初演。契約している出版社はロンドンのリコルディ社。TBS 系「情熱大陸」でも注目を集めた。2014年4月に名古屋フィルハーモニー交響楽団のコンポーザー・イン・レジデンスに就任。

■関連記事および公演
●NHK交響楽団 第63回「尾高賞」に藤倉大の作品

Music Tomorrow 2015
6/23(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
指揮:パスカル・ロフェ
サクソフォン:須川展也
管弦楽:NHK交響楽団 

ジョン・アダムズ/サクソフォン協奏曲(2013)[日本初演]
藤倉 大/インフィニット・ストリング(2014)
[NHK交響楽団、ニューヨーク・フィルハーモニック、アンサンブル・レゾナンツ共同委嘱作品・日本初演]
藤倉 大/Rare Gravity(2013)[第63回尾高賞受賞曲]

NHK交響楽団 http://www.nhkso.or.jp