日本モーツァルト協会 創立60周年記念 モーツァルト交響曲全45曲演奏会

天才の足跡を辿る、空前絶後の大ツアー

 これは前代未聞の大企画だ。モーツァルトの全交響曲が、2日間6公演で作曲年代順に演奏される。世界的に見ても極めて稀な、演奏史上に輝く画期的イベントと言っても過言ではない。
 周知の通り彼の交響曲は41曲にあらず。今回は、真作確定の39曲に、真偽不明曲の中から真作の可能性が高い6曲を加えた計45曲が、年代ごとに分けて披露される。この点も日本モーツァルト協会の創立60周年記念企画ならでは。特に、番号のない曲、20番台半ばまでの曲は、生涯唯一の生体験となる可能性十分だ。
 初日は、曽我大介、金聖響、湯浅卓雄が、シアターオーケストラトーキョーを指揮して、第1番〜21番を演奏。会場はサントリーホールのブルーローズ(小ホール)ゆえに、若き日の才気を間近で感知できる。
 2日目は、三ツ橋敬子、井上道義、大植英次が、東京フィルを指揮して、第22〜41番を演奏。こちらは大ホールで、スケールアップした音楽を堪能できる。また各指揮者の解釈も見どころのひとつ。特に2日目は、三ツ橋の第25・29番、井上の「パリ」「ハフナー」「リンツ」、大植の「プラハ」&三大交響曲など、興味深いプログラムが並んでいる。
 8歳から32歳まで生涯にわたって書かれた交響曲は、モーツァルトの音楽的成長の濃密な縮図。それを短期集中的に耳にすることは、天才の変遷と円熟、先進性、引いては音楽の素晴らしさを実感する意義深い旅となる。もちろん珍しい曲や有名曲に絞るのもひとつの楽しみ。ロビーではCDや書籍も販売されるなど、ホール全体が“モーツァルト市”と化すので、足を運べば興趣は尽きない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年3月号から)

3/7(土) サントリーホール ブルーローズ(小)
11:00 曽我大介(指揮)、15:00 金聖響(指揮)、18:30 湯浅卓雄(指揮)
管弦楽:シアターオーケストラトーキョー
3/8(日) サントリーホール
11:00 三ツ橋敬子(指揮)、15:00 井上道義(指揮)、18:30 大植英次(指揮)
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
問:日本モーツァルト協会03-5467-0626 
http://www.mozart.or.jp