チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

熱きコンビが放つ渾身の一撃

チョン・ミョンフン ©K.Miura
チョン・ミョンフン ©K.Miura
 チョン・ミョンフンが指揮する東京フィルの公演は、常に聴き逃せない。2001〜10年、チョンのスペシャル・アーティスティック・アドヴァイザー時代も、毎回熱い注目の中で快演を展開した彼らだが、桂冠指揮者となってチョンの登場機会が減った今、その共演はまさに“一期一会”だ。それを実感したのが、13年11月の《トリスタンとイゾルデ》全曲。厚い響きと精緻な構築を終始保ちながら、引き締まった官能を表出した演奏は、両者が培ってきた音楽の深さを十全に知らしめ、聴く者にさらなる共演を熱望させた。
 そして今年2月、そのとき以来の共演が実現する。演目はマーラーの交響曲第6番「悲劇的」。これには激しく胸が躍る。当コンビにとってマーラーは、合併後の東京フィルの幕開けを告げた01年の第2番「復活」以来、幾多の名演を残してきた作曲家。また、N響客演時や12年から首席客演指揮者を務めるシュターツカペレ・ドレスデンでも継続して取り上げるなど、チョンが力を注ぎ続けるレパートリーでもある。しかも彼の第6番は日本初披露。古典的な器楽交響曲の到達点にして新ウィーン楽派を予見した同曲がいかに表現されるか? チョン自身「マーラーの中でもそれ以前から以降の作品への転換点。必ずしも“悲劇的”とは考えておらず、むしろロマン派から20世紀音楽へ繋がる重要な作品」との旨を述べているから、これまでになく清新な「悲劇的」出現への期待も大きい。
 チョンの大きな魅力は、高いテンションの維持がもたらす濃密な感動にある。その意味でも彼に相応しい本演目は、何を置いても“必聴”と言うほかない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年2月号から)

第859回 サントリー定期シリーズ
2/25(水)19:00 サントリーホール
第91回 東京オペラシティ定期シリーズ
2/26(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
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