小川里美(ソプラノ)

今度は《メリー・ウィドウ》のハンナに挑戦です!

 ©Kei Uesugi
©Kei Uesugi
 2014年は1年を通してほとんど出ずっぱりだったといってよいほどオペラ出演が相次いだ小川里美。新年も、「ものすごく緊張しています」と語るNHKニューイヤーオペラコンサート初出演で幕を開けると、2月には東京芸術劇場のシアターオペラ・シリーズの第8弾《メリー・ウィドウ》に出演する(石川県音楽文化振興事業団・金沢芸術創造財団との共同制作)。このシリーズは毎回、原語と日本語を自然に混在させるための舞台設定がユニーク。今回は東南アジアの小国ポンテヴェドロの在日大使館が舞台。小川の演じるハンナはポンテヴェドロ国の経済を支えてきた大物国際投資家の未亡人という設定だ。
「究極の読み替えが斬新。芝居として見ても楽しい、今までにない作品になると思います。演出は狂言の茂山童司さんなので、“和”の要素も入った舞台になるでしょう」
 ハンナは、歴代のスター・ソプラノたちが歌ってきた華やかな役だ。
「自分がこの年齢で歌っていいのか不安になることもあります。でも他人と比べても意味がない。私自身の声で歌うしかないわけですから。11月に藤原歌劇団《ラ・ボエーム》で初役のムゼッタを歌った時、ミミ役のバルバラ・フリットリさんもそれを指摘してくれました。『誰か他の人のイメージで歌おうとしていない? 一番大事なのはサトミの声でムゼッタを歌うこと』。固定観念を持たないように慎重に注意してきたのですが、いつの間にか意識していたのかもしれませんね」
 このシリーズでは昨年の《こうもり》に続いてのオペレッタ出演となる。
「オペレッタは楽しくて華やかで明るい、音楽の一番いい部分を楽しめるのが魅力です。ゲストのメラニー・ホリディさんや主要キャストは昨年からのメンバーなので、2年目で打ち解けて、どう作れるかも楽しみです」
 4月には、やはり東京芸術劇場主催公演で小林研一郎&読売日本交響楽団のマーラー交響曲第2番《復活》のソロを歌う。
「2012年のホールのリニューアル公演でも読響さんと《復活》を歌いました。あのソロには、私の声だと少し重いと思うので、そこをコントロールする難しさはありますが、やはりラストの解放感はハンパじゃないですよね(笑)。歌っていても感動します」
 小川がレパートリーについて語るとき、その役の声のキャラクターや、登場人物の内面的な性格分析に必ず話が及ぶ。誠実でクレバーな役との向き合い方がとても頼もしい。歌うべき膨大なレパートリーが彼女を待っている。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年1月号から)

石川県音楽文化振興事業団・金沢芸術創造財団 × 東京芸術劇場 共同制作公演
レハール:喜歌劇《メリー・ウィドウ》
2015.2/22(日)15:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 
http://www.geigeki.jp

2015.2/28(土)15:00 金沢歌劇座
問:石川県立音楽堂チケットボックス076-232-8632 
http://www.ongakudo.jp

小林研一郎&読売日本交響楽団 マーラー:交響曲第2番「復活」
2015.4/24(金)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296