ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団

両大家の想いをこめた捧げもの

ジョナサン・ノット ©K.Miura
ジョナサン・ノット ©K.Miura

 以前ジョナサン・ノットにインタビューした際、彼は「東響では、ドイツ的な音を目指すべく、ドイツ・ロマン派の音楽を主に取り上げたい」と話していた。そして実際、今年4月の音楽監督就任以来、マーラー、シューベルト、ブラームスを軸としたプログラムで、明晰かつエネルギー溢れる演奏を披露してきた。次いでいよいよ12月、ワーグナー&ブルックナーという一方の本丸を成す大家が登場する。
 曲目がまた意義深い。妻コジマへの誕生日プレゼントであるワーグナーの「ジークフリート牧歌」と、この巨匠に献呈されたブルックナーの交響曲第3番「ワーグナー」。つまり、形上の関連性に加えて、敬愛する人物との心の繋がりを示す2曲が並んでいる。まず「ジークフリート牧歌」は、ノットと東響の精緻な音作りが生きる作品ゆえに、フレッシュな快演が期待される。ブルックナーの3番は、1873年の第1稿による演奏。同曲は1877年と89年に大きな改訂がなされており、第1稿(ウィーン・フィルに初演を拒否された)は、《ワルキューレ》《タンホイザー》他のワーグナー作品が引用され、ベートーヴェンの「第九」に類似しているなど、現行の第3稿とはかなり違う。今回は、ブルックナーが想いをこめた「ワーグナー」交響曲本来の姿、つまりワーグナー本人が目にしたスコアを、耳にすることができる。これは生で聴く機会が稀なので大注目だし、首席指揮者を務めるバンベルク響と壮絶な録音を実現させるなど、同稿への思い入れが強いノットだけに、渾身の名演は必至。逃せない公演となるのは、もはや言うまでもない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年12月号から)

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