藤村俊介(チェロ)& 安田謙一郎(チェロ)

師弟で紡ぐ絶妙のデュオ

左:藤村俊介 右:安田謙一郎
左:藤村俊介 右:安田謙一郎

 近年、2CELLOSの活躍などで注目を集めているチェロのデュオ。この編成のための作品は、ポップスやロックの編曲だけでなく、バロック時代や近現代にも名曲が多い。この度、マイスター・ミュージックから発表される『チェロ・デュオ』は、その歴史を凝縮した1枚だ。演奏はNHK交響楽団次席奏者の藤村俊介と、日本チェロ界の重鎮・安田謙一郎。2人は師弟関係にあることもあり、実に自然で息の合ったアンサンブルと、艶やかでエレガントな音色を聴かせてくれる。2人のデュオが実現した経緯を藤村に尋ねた。
「安田先生は僕が最も尊敬してやまないチェリスト。中学2年生で師事して以来、音楽に純粋に人生を捧げる生き方から大きな影響を受けました。今回の録音は共演者の人選を一任されたので、駄目元で先生にお願いしたら快諾いただいて。ひとつの対象に向かって2人でアプローチしていく中で、先生の柔軟性と懐の深さを間近で見られて勉強になりました。一生の思い出に残る録音です」
 安田もそんな愛弟子を昔から高く評価していたという。
「若い頃から熱心で、朝5時から学校に来て練習していた姿をよく覚えています。今回は彼の邪魔になったり、遅れをとったりしないように必死で頑張りました(笑)」
 収録曲は、2つの18世紀作品(ボッケリーニ&クープラン)と3つの近現代作品(バルトーク、ポッパー、プロコフィエフ)を対置。パートはすべて藤村がファーストで、安田がセカンドに固定した形で演奏している。チェロ2挺のアンサンブルの醍醐味や難しさを、安田は次のように語る。
「チェロのデュオは対話から成っているケースが多いので、作れる音楽は限られているかもしれません。でも、藤村君は昔から音色や音形に対する想像力が豊かなので、その道を模索していく内に、対話を越えた立体的なイメージを共有できた気がします。とても面白かったですよ」
 バルトークの二重奏曲集は、ヴァイオリン2挺のために書かれた作品をW.クルツがチェロ用に編曲・編集したもの。藤村は、「原曲のヴァイオリンの魅力を損なわずに演奏するのが大変でした」と振り返り、「ハンガリーのジプシーの音楽をチェロで再現するのは不可能に近い。どうしても椅子に座った改まった姿勢になってしまうんです。でも、バルトークはそれを他の楽器でも育むことができるように、“空気”というか、“隙間”も残してくれた」
 次回作ではヘンデルのソナタに挑戦したいと語る2人。こちらにも期待が募る。
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年12月号から)

【CD】『チェロ・デュオ』
マイスター・ミュージック
MM-3034 ¥2816+税
11/25(火)発売