ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ)

多層的な音楽世界のエッセンス

 知的かつ温かな血の通った音楽性で、世界中の聴衆を魅了し続けている現代フランスを代表する名ピアニスト、ジャン=マルク・ルイサダ。2005年にNHKで放映された『スーパーピアノレッスン』では、深い洞察力に満ちたショパン解釈の神髄を伝授すると共に、映画や芝居を愛する才人としての一面やウィットに富んだ人柄も滲ませた。そんな名匠が、今秋も日本の音楽ファンの前に降臨し、滋味あふれる秀演を披露する。東京でのリサイタルでは、ショパンが結核に侵されながらも、壮大で重厚な楽想で新境地を拓いたソナタ第3番と、やはり同時期に書かれ、彼の数あるマズルカでも特に佳品とされるop.59(第36〜38番)を軸に。ここへ、シューマンが妻クララへの愛情を込めた「フモレスケ」と、哀悼の感情を強く感じさせるハイドンの「アンダンテと変奏曲」を添えた。ルイサダの多層的な音楽世界のエッセンスとも言えるプログラム。じっくりと耳を傾けたい。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ 2014年6月号から)

11月24日(月・祝)・紀尾井ホール
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