新・クラシックへの扉 #43 川瀬賢太郎(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

週末の午後、俊才たちの辣腕に酔う


 今年30歳の指揮者と23歳の管楽器奏者…。11月の新日本フィル『新・クラシックの扉』の主役たちは、とびきり若い。指揮は活躍目覚ましい川瀬賢太郎。2006年東京国際音楽コンクール<指揮>で2位(1位なし)を受賞後、著名楽団に次々と客演し、現在は神奈川フィルの常任指揮者と名古屋フィルの指揮者を務める文句なしのホープだ。今回のメインは「展覧会の絵」。精緻な彫琢の中に生気を吹き込む辣腕の彼が、この名曲にいかなる輝きを与えるか? 新日本フィルの妙技ともども耳目を離せない。前半にロシア国民楽派リャードフのおとぎ話的交響詩を並べた選曲も光る。その繊細で機智に富んだ音画は、小粒ながらセンス抜群。「キキモラ」「魔法にかけられた湖」「バーバ・ヤガー」の代表作3曲をまとめて生で聴く機会など日本では稀だから、実に嬉しい。
 ソリストはファゴットの小山莉絵。大注目株だ。ドイツ生まれで、著名ファゴット奏者・小山昭雄を父にもつ彼女は、驚くことに参加した24のコンクール全てで最高位を受賞している。なかでも2013年ミュンヘン国際音楽コンクールの最高位(2位)は、最上級の実力の証し(同率2位はベルリン・フィルの現役奏者)。すでに欧州の第一線で活動を続けているが、在京オーケストラとの共演は貴重であり、演目が超難曲であるジョリヴェの協奏曲なのも凄い。既にリリースしている同曲のCDでは、鮮やかなソロを聴かせている。破格の技巧はもとより、豊麗な音色と雄弁な表現力で一頭地を抜く彼女の協奏曲は必聴!
 俊英たちが躍動するオーケストラ公演で、心弾む午後を過ごそう。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)

11/21(金)14:00、11/22(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
http://www.njp.or.jp