グラミー賞オペラ《アイナダマール》が日本初演、日生劇場で15,16日

日生劇場で毎年開催されている『NISSAY OPERA(ニッセイオペラ)』。今年はアルゼンチンの作曲家ゴリホフの《アイナダマール》を日本初演する。15、16日の本公演に先立ち、12日から14日までの3日間、「ニッセイ名作鑑賞教室」として、中学・高校生向けに同演目が上演されている。うち13日の公演では、15日のキャスト(横山恵子・清水華澄ほか)が出演した。

まずオペラ本編への導入として、「魂の詩人ロルカとスペイン」と題したプロローグが上演される。俳優の長谷川初範がジャーナリストに扮して、スペインの詩人フェデリーコ・ガルシア・ロルカと、同演目のストーリーの背景について、コミカルな演技も交えて語っていく。本編の理解に役立つし、30分弱という短い時間ながら、舞台演劇に触れられる。

休憩後、80分ほどの本編が始まる。
老いた女優マルガリータ・シルグが、ロルカと出会った若かりし頃を回想して進行するが、舞台では“現在”と“過去”の間を何度もタイムスリップしながら、ときにそれらが混ざり合い、幻想的な雰囲気を醸し出す。

音楽は今世紀の作品ながらグラミー賞を獲得するなど人気作なだけあって聴きやすく、実にユニーク。スペインやラテン・アメリカの音楽が融合している上、特殊打楽器の多いオーケストラに、フラメンコのギターやパルマ(手拍子)、ペルー発祥のカホンなどの民族楽器、そしてシンセサイザーや録音による効果音など、あらゆる種類の音響による音楽が、矛盾することなく成立している。歌も、通常のオペラ歌唱だけではなく、ときにスピーカーを通してインパクトを増幅、カンタオール(男性のフラメンコ歌手)も重要な役どころで登場してアクセントを与える。
音楽以外の要素も多く、舞台上ではセットが細かく変化し、何度も現れる背景の映像は色彩豊かで美しい。多くのダンサーも登場し、フラメンコなど激しい踊りから、集団でのパフォーマンスまで、多様な表現で目を奪う。
この日のキャストの主要な3人、マルガリータ役の横山恵子、ロルカ役の清水華澄、マルガリータの弟子ヌリア役の見角悠代は、強力な声の響演を聴かせていた。指揮の広上淳一の存在感はすばらしく、読売日本交響楽団と特殊楽器群、合唱のC.ヴィレッジシンガーズまで、熱狂と神秘の舞台を情熱的に作り上げていた。演出は近年のオペラ演出で活躍中の粟国淳。
歌唱、演劇、美術、映像、ダンス、パフォーマンス、民族音楽、オーケストラ、音響技術・・・あらゆる表現ジャンルが見事に結集した《アイナダマール》。学生たちにとって、いずれかのジャンルで刺激を受けられる、これ以上ない好機になったに違いない。そしてそれは、大人たちにとってももちろん同様だ。オペラ愛好家ばかりか、新たな感動を求める人にとって、新鮮な刺激と発見に満ちた体験になることだろう。
(取材・文:林昌英 photo:M.Terashi & J.Otsuka/TokyoMDE  *写真は11月15日のキャスト、横山恵子組のGPから)

◆《NISSAY OPERA 2014》
ゴリホフ/オペラ《アイナダマール》<全3景 原語スペイン語上演・日本語字幕付>
2014/11/15(土)、16(日) 14:00 日生劇場

[第1部]
『魂の詩人ロルカとスペイン』〜オペラ『アイナダマール』へのプロローグ〜

スペインの偉大な世界的詩人フェデリーコ・ガルシア・ロルカの人となり、ロルカの生きた時代と、彼の悲劇的な最期について、詩や戯曲の一部を朗読形式で紹介

台本・構成:田尾下哲

出演:
長谷川初範 (ペレイラ役:ロルカの伝記を書いているジャーナリスト)
柴山秀明(ロルカ役)
三枝宏次 (ロルカの友人役)

フラメンコギター:智詠
カホン:朱雀ハルナ

[第2部]
オペラ《アイナダマール》 (全3景 原語スペイン語上演・日本語字幕付)

台本:デイヴィット・ヘンリー・ウォン 作曲:オスバルド・ゴリホフ

指揮:広上淳一
演出:栗國淳


出演
マルガリータ・シルグ:横山恵子(15日)/飯田みち代(16日)
ヌリア:見角悠代(15日)/馬原裕子(16日)
ロルカ:清水華澄(15日)/向野由美子(16日)
ルイス・アロンソ:石塚隆充(全日)
ホセ・トリパルディ:加藤宏隆(15日)/小田桐貴樹(16日)
闘牛士:柴山秀明(15日)/鹿野浩史(16日)
教師:狩野賢一(15日)/佐藤望(16日)

合唱:C.ヴィレッジシンガーズ
大木美枝 加形裕子 河口三千代 北爪和代 白神晴代 福間章子 藤井あや 藤長静佳 増田弓 南智子 宮田早苗 森川朋子 山下千夏 山本千鶴 横町あゆみ

管弦楽:読売日本交響楽団

問:日生劇場 03-3503-3111
http://www.nissaytheatre.or.jp

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