ダニール・トリフォノフ(ピアノ)

ミステリアスな輝きを放つ美音

(C)Dario Acosta/DG
(C)Dario Acosta/DG

 2011年チャイコフスキー・コンクールで頂点に輝いたトリフォノフは、その優勝を契機に見事な飛翔を遂げた。今や世界で多忙な演奏活動を行う。ミステリアスな輝きを持つ美音、自然発生的に湧き出す音楽。聴衆は頭で考えることを忘れ、ひたすら音楽に身を任せる楽しみを味わうことになる。強い引力を持つピアニストだ。
 そんな彼が、チャレンジングなプログラムとともに来日する。曲目は、バッハ=リスト「幻想曲とフーガ ト短調」、ベートーヴェンのソナタ第32番、リストの「超絶技巧練習曲」全曲ほか。
 今年、自作のピアノ協奏曲初演を経験している彼にとって、作曲家でありスターピアニストでもあったリストへの共感は特別なはずだ。ピアノ技巧の限界に挑む「超絶技巧練習曲」をどう弾き上げるだろうか。また、ベートーヴェン最後のソナタにいかに対峙するのかも聴きどころ。中身の濃いプログラムで、奏者だけでなく、聴く側にも多くのエネルギーが求められそう。
 演奏に没頭することと冷静でいることのバランスの難しさについて尋ねたとき、トリフォノフはこう答えた。
「演奏中に自分を忘れてしまうのは素晴らしいことだと思う。精神的な制約をなくし、音楽の中に示唆されるものを聴くためには、作品に没頭しなくてはならない。ただ、耳は常に開かれている必要があり、それを保つことは簡単ではない」
 自由で新鮮な彼の音楽は、こうして作られている。今回は、ピアノ作品としてある種の高みを極めた楽曲たちを通して、彼の特別な精神世界を覗くことになりそうだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)

10/13(月・祝)14:00 横浜みなとみらいホール
10/21(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp
他公演
10/8(水)岡山シンフォニーホール
10/9(木)神戸文化ホール
10/10(金)前橋市民文化会館
10/12(日)武蔵野市民文化会館
10/19(日)青葉の森公園芸術文化ホール

ワレリー・ゲルギエフ(指揮)マリインスキー歌劇場管弦楽団との共演
10/16(木)愛知県芸術劇場コンサートホール
10/18(土)所沢市民文化センターミューズ
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040