【特集】創立80周年の藤原歌劇団

アニバーサリーにふさわしい 話題の公演が目白押し


《ラ・ボエーム》から始まった輝かしい歴史

 日本のオペラ界の屋台骨を支えてきた藤原歌劇団が、今年、創立80周年を迎えている。
 カンパニーの名は、“吾等のテナー”と呼ばれて愛され、欧米で活躍した初代総監督・藤原義江(1898〜1976)に由来する。記念すべき第1回公演は1934年6月7・8日、日比谷公会堂でのプッチーニ《ラ・ボエーム》。公演の5日前には新聞に異例の全面広告も掲載された派手な旗揚げ公演は、上演クォリティの面でも集客面でも大成功だったという。
 これまでに上演した演目は80作品以上。戦後まもない時期の帝国劇場での、1興行あたり20〜30公演という凄まじい連続上演の数々や、サンフランシスコ条約が結ばれたばかりの1952年からの3度の渡米公演などは快挙としか言いようがないし、現在では当たり前になっている日本語字幕を初めて導入したのも藤原歌劇団だった(1986年)。
 近年、意欲的に取り組んでいるのが、ペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティバル芸術監督アルベルト・ゼッダを招いてのロッシーニ上演。その世界的権威によって鍛え抜かれた実力をあらためて見せつけたのが今年1月のロッシーニ《オリィ伯爵》だった。当代きってのロッシーニ歌手シラグーザの圧巻の歌唱はもちろん、緻密なアンサンブルによる上演で、80周年イヤーの幕を開けた。

豪華な歌手陣が結集してアニバーサリーを祝う

 6月、旗揚げ公演と同日、同会場で行なわれるのが80周年記念コンサート。所属歌手が勢揃いのガラで祝う。終演後には、晩年の藤原義江が住まいとして利用していた帝国ホテルで記念パーティも開かれる。
 同じく6月に上演する《蝶々夫人》は、《ラ・トラヴィアータ》と並んで、藤原歌劇団の最多上演作品の一つ。なかでも、日本の伝統美が薫る故・粟國安彦演出の舞台は、同団を代表する名プロダクションだ。題名役の清水知子、山口安紀子、佐藤康子という、次代を担う期待のソプラノと、ステファノ・セッコ、笛田博昭の二人のピンカートンが歌声を競う。指揮は、こちらも注目の若手実力派・園田隆一郎。

2007年の《蝶々夫人》公演から
2007年の《蝶々夫人》公演から

 旗揚げ演目と同じ11月の《ラ・ボエーム》では、主役2人に、現役最高ソプラノの一人バルバラ・フリットリとテノールのジュゼッペ・フィリアノーティを招聘。対する日本人キャストは砂川涼子と村上敏明と、こちらも人気実力十分のコンビ。人気のバリトン須藤慎吾のマルチェッロに初役となる小川里美のムゼッタなど、聴きどころ満載だ。指揮には同世代の指揮者の中でオペラ上演に抜きん出た実績を持つ沼尻竜典が登場。早世の洋画家・佐伯祐三の描くパリをそのまま立体化したような美術も話題になった、2007年制作の岩田達宗演出の舞台だ。
 記念公演の締めくくりは来年1月、藤原歌劇団初上演となるヴェルディ《ファルスタッフ》。主役の牧野正人、折江忠道を始め、充実のオール日本人キャストはもちろんだが、一番の注目はロッシーニの権威ゼッダが振るヴェルディ。「ブッファ」「アンサンブル」という共通軸からどんなヴェルディ像を描き出すのか、興味は尽きない。粟國淳によるニュー・プロダクション。指揮は名匠アルベルト・ゼッダが務める。
 80年という時間のパースペクティブの中に、藤原歌劇団の現在、そして未来が見える一連の記念公演。必見。
文:宮本明
(ぶらあぼ2014年6月号から)

【Information】
藤原歌劇団創立80周年記念公演 これからのラインアップ
■藤原歌劇団 創立80周年記念コンサート
6月7日(土)15:00・日比谷公会堂

出演:家田紀子、伊藤晴、川越塔子、小林厚子、佐藤亜希子、
   清水理恵、野田ヒロ子、廣田美穂、光岡暁恵、河野めぐみ、
   鳥木弥生、牧野真由美、森山京子、小山陽二郎、中鉢聡、
   中井亮一、村上敏明、折江忠道、森口賢二、三浦克次
合唱:藤原歌劇団合唱部 ピアノ:髙橋裕子、藤原藍子 
司会:郡愛子 監修:岡山廣幸

■オペラ《蝶々夫人》(プッチーニ)
6月27日(金)18:30、28日(土)15:00、29日(日)15:00
新国立劇場オペラパレス

指揮:園田隆一郎 演出:粟國安彦 
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 
合唱:藤原歌劇団合唱部 
出演 蝶々夫人:清水知子(6/27)、山口安紀子(6/28)、佐藤康子(6/29)
   ピンカートン:ステファノ・セッコ(6/27、29)、笛田博昭(6/28)
   シャープレス:牧野正人(6/27、29)、谷友博(6/28)
   スズキ:牧野真由美(6/27、29)、松浦麗(6/28) ほか

■オペラ《ラ・ボエーム》(プッチーニ)
11月1日(土)、2日(日)、3日(月・祝)全日15:00
Bunkamuraオーチャードホール

指揮:沼尻竜典 演出:岩田達宗 
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 
合唱:藤原歌劇団合唱部
出演 ミミ:バルバラ・フリットリ(11/1、3)、砂川涼子(11/2) 
   ロドルフォ:ジュゼッぺ・フィリアノーティ(11/1、3)、村上敏明(11/2)
   マルチェッロ:堀内康雄(11/1、3)、須藤慎吾(11/2)
   ムゼッタ:小川里美(11/1、3)、伊藤晴(11/2) ほか

■オペラ《ファルスタッフ》(ヴェルディ)ニュープロダクション
2015年1月24日(土)、25日(日)両日15:00・東京文化会館

指揮:アルベルト・ゼッダ 演出・粟國淳 
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 
合唱:藤原歌劇団合唱部
出演 ファルスタッフ:牧野正人(1/24)、折江忠道(1/25)
   フォード:堀内康雄(1/24)、森口賢二(1/25) ほか
9月下旬発売予定

問:日本オペラ振興会チケットセンター044-959-5067
http://www.jof.or.jp