ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団

時空を超えた新感触の音楽体験

 Photo:N.Ikegami
Photo:N.Ikegami

 新時代は鮮やかに始まった! 東京交響楽団&新音楽監督ジョナサン・ノットによる最初の公演だった4月のマーラーの交響曲第9番は、あらゆる音とフレーズを明確に紡ぐ現代音楽寄りのアプローチで、曲の斬新な構造を表出した快演。緊張感漲る東響の“栄養価の高い”演奏と相まって、新コンビの特質を早くも印象付けた。
 さて、新体制直後の2ヵ月間に4プログラムを披露する意欲的ラインアップの最後が、6月の東京オペラシティシリーズ。これはノットの妙味が最も発揮されるプログラムだ。まずはバッハ/ウェーベルン「6声のリチェルカーレ」と藤倉大「5人のソリストとオーケストラのための《Mina》」。前者は、これに先立つ6月定期で取り上げるブーレーズが得意とする曲で、プログラム構成に巧みなノットならではの選曲といえる。また、後者は国際的作曲家・藤倉が自身の娘Minaの誕生を契機に作曲した作品で、ノットが「ファンタスティック」と賞する音楽だ。特に後者は、東響が誇る4人の木管首席奏者のソロが聴きものだし、ツィターに似た打弦楽器でピアノの前身と言われる「ハンマーダルシマー」のソロも興味深い。続くはハイドンの第44番「悲しみ」とブラームスの第4番という「ホ短調交響曲」の並び。当時珍しい調性の前者はブラームスが指揮した唯一の自作以外の交響曲だというから、さすがノット! そしてもちろんロマン派の大家の同調の名作が続くことで何が見えてくるのか?が胆となる。古典と現代曲に等しいスタンスを置いて相互の新たな魅力を浮上させるノットと、精緻なアンサンブルで応える東響…このコラボレーション&プログラムは、生でこそ醍醐味を体感できる。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2014年6月号から)

第80回 東京オペラシティシリーズ Lコード:39480
★6月21日(土)・東京オペラシティコンサートホール
問:TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp