リナ・ヴァスタ(ソプラノ)

凛として清澄な、奇跡のソプラノに酔う


 これは奇跡だ! 今年2月の『なんでも! クラシック2014』のガラ・コンサートで、リナ・ヴァスタが歌う《椿姫》の〈さようなら過ぎ去りし日よ〉を聴いた人は、皆そう思ったであろう。80歳を超えた彼女の歌声は、美しく澄み切っており、のびやかで若々しい。弱音もまっすぐ耳に届き、精妙な歌い回しが心に染み渡る。彼女は6月に本格的な公演を行う。当然大注目だ。
 彼女は35歳まで劇場に出演後、指揮者の夫の意向で引退。1984年、ヴェルディが建てたミラノの「音楽家のための憩いの家」に移り、1988年夫の死去後、歌を再開した。そして今なお現役。先日話を聞いた際も「サロン等のほか劇場でも歌っている。先日はスカラ座のコーラスと共演し、さらにオランダやドイツにも行った」と語っていた。また後進の指導も行い、「1週間に10人位の生徒を教えている」。
 今回は、「《運命の力》のアリアは必ず歌う」ほか、《修道女アンジェリカ》《椿姫》のアリアやイタリア歌曲が予定されており、「最初の出演作《リゴレット》のジルダのアリアも歌う可能性がある」など楽しみがいっぱい。加えて「教え子と一緒に公演できるのは嬉しい。2人共日本人離れした声をもつ優秀な歌手」と強く推す直弟子、上江隼人、笛田博昭(共に二期会や藤原歌劇団で主役を張る実力者)の歌唱にも期待がかかる。
 声を保つ秘訣を「最初に正しい歌唱法を教わったこと。横隔膜を機能させるテクニックを身に付ければ、それを失うことはない」と語り、「音楽や歌は私のすべて。皆に音楽の良さをわかって欲しい」と願う彼女。その歌声をぜひ耳にしたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2014年5月号から)

★6月8日(日)・東京オペラシティ コンサートホール Lコード:33978
問:光藍社050-3776-6184 
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